モントリオールのおじいちゃん
Epilogue
あれから12年、僕は今日本に住んでいる。
日本の大学に留学生として通っている。
おじいちゃんは、僕が中学生のときに天国へ行ってしまった。
それまでの間、おじいちゃんは僕とたくさんお話をした。
時々、沙雪の話もした。
沙雪の話をする度、おじいちゃんは目尻にたくさんしわを寄せて、砂粒のような細雪の降る窓の外を見ながら、懐かしそうに笑っていた。
そんなおじいちゃんを見て、僕も笑顔でいた。
沙雪とは今でも仲良くしている。
クリスマスには、2人でモントリオールに行ったりもする。
石畳に雪が降り積もる中、僕と沙雪はおじいちゃんのお墓を訪れる。
「おじいちゃん」
沙雪は墓石から雪を払って、丁寧に拭いて、花を添える。
「どうか、私たち夫婦を、見守っていてください」
作品名:モントリオールのおじいちゃん 作家名:河上かせいち