Minimum Bout Act.02
「冗談だ……そう、シンの責任じゃねえ。だがその後、俺の命令を無視して突っ走ったシンとチェイスは、市街地での戦闘でミスを犯した。シンは、女の、しかも子どもを撃ち殺してしまったんだ……初めてシンは戦争で敵以外の一般人を手に掛けてしまった。それ以来、スナイパーとしても軍人としても使い物にならなくなっちまったんだよ。引き金を引く時に、どうしても少女の顔がちらついて、打てなくなっちまったーーー」
「だからシンは銃器系のものを一切扱わないのね……」
いつもカッツとルーズの2人だけしか、銃を改造した道具を扱わない。シンは手袋に仕込んだてぐすを使ってターゲットを捕まえたり、進路を塞いだりする。
「それから1年後くらいにリドヒム軍が反政府ゲリラの首謀者を取っ捕まえて、一時的に内乱も治まった。それで俺達エンド軍は撤収し、後はリドヒムに任せて戻った。俺は使い物にならなくなったシンを、チェイス共々リドヒム軍から自分の部隊に無理矢理引き抜いて連れて来ようとしたが、チェイスは子どもがいるからと言って断ったんだ。で、シンの野郎だけ連れて帰った。それから俺もいい加減戦争に飽き飽きしてたから、シンと仲良く退役して今に至るって訳だ」
一度欠伸をしてカッツは続けた。
「シンはずっとチェイスを残して来た事を心配してたからな。俺は気にする事ないって言ったんだが……。別に強制させられて軍に入る訳でも、反政府組織に加わる訳でもない。てめえで選ぶ事は出来るんだ。一般人だってそこから逃げ出そうと思えば逃げられる。が、金がなかったり頼る相手がいなかったりするから毎日頭の上でドンパチやってる街で生活してるだけだ……チェイスが怪我をしたのも、リドヒムに残ったのも、死んだ事も、ましてやリドヒムに生まれてしまった事も全てシンの所為じゃない」
「……後悔してたって事?」
「後悔とは少し違うな。シンはずっと人を殺す事に疑問を持っていた。それが、ガキを撃ち殺した事で疑問が確信に変わったんだ。銃が二度と握れなくなる位に、あいつは人の命を奪う事の恐ろしさを己で感じたのさ。誰かを殺すくらいなら、殺された方がましだってな。だから、チェイスを残して来た自分を責めているんだ」
「後悔と自責、ね。似たようなものだと思うけど」
皆それぞれ思いを抱えて生きているのだと、ルーズは痛感した。
作品名:Minimum Bout Act.02 作家名:迫タイラ