黒い満月
突然ミッキッコから飛び出して来た【金環蝕】と言う言葉。
「なぜ今、この多国籍レストランで、ビール飲みながら … 金環蝕なんだよ」
私はますます理解不能となりました。
だが、ここは気を落ち着かせて、
「ああ、ミッキッコ、そうだよな、
1987年に沖縄で観測されて、25年振りの金環蝕が東京でもバッチシ見られるんだったよなあ …
で、今日から1年後の2012年5月21日に起こる金環蝕、
それがどうしたの?」
私はそう聞き返しながら、ミッキッコのグラスにビールを一杯注いでやりました。
ミッキッコは、その泡が零れないようにそっとグラスに口を付け、
その後、私の目をしっかり見つめながら神妙に話して来るのです。
「ねえ、ヨシキ、
金環蝕って、太陽/月/地球と一直線に並んで起こる現象でしょう、
それでね、今度起こる金環蝕はね … ツボにはまり過ぎてね、
そうね、三つのボタンに糸を通して、
その糸をピンと張ったような状態になってしまってね、
お月さんが … 抜け出せなくなってしまうのよ」