黒い満月
するとミッキッコは背筋を伸ばし、ぽつりぽつりと。
「夢よ、
この金環蝕の夢を買って欲しいの、
私が見た夢、
そう、2012年5月21日以降、毎日毎日続いて行く金環蝕、
その夢を … ヨシキに買って欲しいのよ」
私は、こんなミッキッコからの夢のオファーを聞きながら、ぼんやりと思い浮かべました。
それは約800年ほど前のこと。
北条政子の妹が、着物の袂に太陽と月が入って来る夢を見ました。
それは吉夢だったのですが、政子はそれは災いをもたらす夢だと妹に嘘を吐いて、買い取りました。
そしてその後、政子は後の征夷大将軍・源頼朝と結ばれ、吉を勝ち取ることになったわけです。
そのためか、
私はなんとなくミッキッコの要望がわからないわけではなかったのです。
しかし … ですよ、
「夢の売り出しか、
だけどこの場合は、吉夢ではなく、災い夢の売り出しになるよなあ、
まさに北条政子の吉夢買いの裏返し版だね」と呟き返しました。