「神のいたずら」 第七章 事件
「ねえ、今日昼休み話さない?ちょっと報告があるの」
「いいよ、じゃあ、校庭で・・・何かしら」
「その時に言うね」
詩緒里とはクラスが分かれてしまった。毎朝登校だけは一緒にしていたが、だんだん話すことが少なくなっている。会っていない時間がそうさせるのだろう。しばらくぶりに話す機会になった。
碧は詩緒里を見つけて隣に座った。
「ねえ?話って何?」
「絶対に内緒よ・・・碧だけに言うんだから」
「解ってるよ」
「春休みの終わりに先輩と・・・その・・・最後までいったの」
「ほんと!すごい!ねえねえ、どんな感じだった?」
「どんなって言われても・・・よく解らないけど、なんか挟まっている感じがしてる」
「きゃあ〜リアル!」
「だって・・・本当にそう感じるんだもの」
「他には何か感じなかったの?」
「くすぐったかった・・・」
「どの辺りが?」
「脇とかお腹とか触られると笑ってしまいそうになる」
「ハハハ・・・笑っちゃしらけるわよね。じゃあ堪えていたのね?」
「そう・・・大変だった」
「避妊したの?」
「当たり前じゃない。出来ちゃうから。碧も考えないといけないよ」
「先輩が自分で買ってきたの?」
「家にあったのを見つけて使ったみたい」
「良かったね、家にあって。なかったら自販機で買うしかないからね」
「よく知っているわね、そんな事」
「コンビニに行ったときに見つけたから」
「なるほど・・・」
「話してくれてありがとう・・・じゃあこれからは時々するのね?もう」
「多分ね・・・求められると思うわ」
「詩緒里からは求めないの?」
「女の子よ・・・そんなことできないんじゃない?」
「そう?私なら・・・自分から行くけど」
「あんたは特別よね、やっぱり・・・」
そうか、詩緒里は近藤先輩と一つになったのか・・・
なんだかとても羨ましかった。姉との約束を守っている自分がこっけいに見えてきた。そんな約束・・・破ってしまおうか、と詩緒里の話を聞いて思った。
晩ご飯の時に弥生の様子がいつもと違っているように感じたので声を掛けた。
「お姉ちゃん、身体の具合でも悪いの?」
「ううん、なんでもないよ・・・」
「だって元気ないんだもん・・・おかしいよ」
「なんでもないって言ってるだろう!」
「なんでそんなにこの頃碧に優しくないの?」
「子供じゃないんだから、自分の事は自分で考えろよ。私も自分の事は自分で考えるから」
「そんな言い方昔はしなかったよ・・・何でも話してきたのに、何にも話してくれない・・・いつからそんなふうになったの?」
「うるさいよ!いちいち・・・干渉すんなよ。部屋に行くから、入ってくるなよ、いいな」
弥生はさっさと自分の部屋に入って行った。残された碧は由紀恵の顔を見た。
「碧、弥生は何かあったのね。今はそっとしてあげなさい」
「だって、あんな言い方しなかったよ・・・もう碧のことなんかどうでもいいんだ」
「そんな事思ってないよ、妹だもの。考えすぎよ・・・」
渋々自分の部屋に戻ろうとしたとき、手前にある弥生の部屋からすすり泣く声が聞こえた。
「お姉ちゃん泣いてる・・・」碧は入るなと言われたが、ドアーを開けて中に入った。
「なんで泣いてるの?碧のせい?」つられてもう涙声に変っていた。
「入るなって言ったでしょ・・・なんで来るの!」
「泣いているんだもの・・・知らん振りなんか出来ない」
「泣いたら忘れるから・・・もういいの、出て行って」
「イヤだ!碧に話してくれなきゃ出てゆかないから」
「何が解かると言うの?あんたに・・・子供のくせに」
「子供じゃないよ。妹だよ。お姉ちゃんが大好きな碧だよ・・・お姉ちゃんは碧のことが嫌いになったの」
「・・・碧・・・こっちへおいで」
「うん」
弥生は碧の身体を強く抱きしめた。本当は自分が抱きしめて欲しかったが、今はこうして辛い気持ちを慰めようとした。
作品名:「神のいたずら」 第七章 事件 作家名:てっしゅう