実験
「費用はこっち持ちだからね。プー子ちゃん」
美結さんは食後にコーヒーを持って来てくれた。
「いいの?結構高いのに」
「いいって。こっちからここに誘ったんだし」
「でも、電話したのはわたしよ」
「嬉しかったよ。あっ!電話」
美結さんの携帯に着信した。遠い実家からだった。お父さんが倒れたので、急遽帰ることになった。私は美結さんをマンションに送って行った。五十九歳のお父さんは、脳溢血で倒れたのかも知れないという。私は精一杯彼女を慰めた。彼女は泣いていた。五十九歳は若い。そんなに悲観することはない。私はそんなことを繰り返し云った。
私は午後三時過ぎに帰宅すると、この日記を書き始めた。書き始めると、あっという間に夕方になってしまった。
私はコンビニへ行き、弁当を買って来て食べた。昼食とのギャップは、激しかった。美結さんにいつ電話しようかと、私はそればかり考えていた。
了