ことばの雨が降ってくる
*辛辣な批評家*
自分の書いたものを読んでもらえるのは、ありがたいし、うれしいことですね。
的確に批評もしてくれるともっとうれしいものですが。
ワタクシたち一家でおつきあいをしていた方の奥様は、一旦はプロの作家になったものの、頭を悩ませる仕事より、お勤めした方がいいといって作家をやめた方です。
いつのころか、ワタクシの作品を読んで、批評してくれるようになりましてね。
それがまた辛辣なんですよ。
つまらない。
表現がいまいち。
読む気が起きない。
意味がわからない。
と、まあ、言いたい放題。
ある日とうとう、
「もう、書く気が起きなくなったんじゃない?」
と言われました。ですが、ワタクシ、
「いいえ。いつかきっとおもしろいって言わせてみせます」
って言い返しました。
ところが、その方はガンを患い、1年間の闘病ののち亡くなってしまったのです。
もう、ワタクシの作品を二度と見てくれることはありません。辛らつな批評も。
空の上から、「残念でした」とあかんべーされているような気がします。
でも、時々ワタクシ、空に向かっていうのです。
「いつかきっと、おもしろいっていわせてみせますよ」
って。
その方が唯一「ちょっと、おもしろい」と言ってくれた作品が“へた・マーク”です。
作品名:ことばの雨が降ってくる 作家名:せき あゆみ