ことばの雨が降ってくる
*形を変えても夢は叶う*
若い頃は漫画を描いていましてね。同人誌なども発行していたり、好きなことをやってました。
漫画家になりたいと思ったこともありましたけど、自分じゃ『なれないな』なんて漠然と思ったり……。
でも、漫画は漫画で好きなだけやったので、やめても後悔はありません。
実を言うと、結婚したとき、無理矢理やめたんですね。
でも、なんだか落ち着かなくて、某有名出版社の童画の講座をうけたりしました。
次男が生まれた頃、昔の仲間が声をかけてくれました。年一回発行ののんびり同人誌をやろうと。
うれしかったですね。
やっぱり何か『描く』ことをしていないと、自分が自分じゃないみたいな気がして。
え? どんな漫画を描いたのかって?
それがですね。ホラーなんですよ。
やめるきっかけは、小学校1年になった長男の一言から。
──お母さん、こんな気持ちの悪いの、描かないで──
ワタクシ、考えました。
やっぱり子どもによくない影響を与えるものはだめだ。
子どもにどうどうと見せられるものを描かないとって。
漫画にこだわらず、絵を描くのが好きでしたから、なにかそういう仕事がないかと思っていたら、舞い込んできたのがカット描きの仕事でした。
冬虫夏草だの、野菜の病害虫だの、まるで畑違いの絵でしたけど、描くのはとても楽しかったのですよ。
そう。『絵が描ける』のであれば、ワタクシはそれでよかったんです。
平面の地図から、立体的に建物や周りの景色を再現したり。
ですから、形は変わったけれど、『絵の仕事がしたい』という夢は叶ったわけです。
作品名:ことばの雨が降ってくる 作家名:せき あゆみ