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茶房 クロッカス その3

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 八月になったばかりのその日、薫ちゃんは店を辞め、代わりに沙耶ちゃんが毎日来てくれるようになっていた。
 薫ちゃんもそうだったが、沙耶ちゃんもびっくりするほど早く店に馴染んでくれた。仕事もスムーズで俺も感心するばかりだった。
 今時の若者ってみんなそうなんだろうか?
 ランチの若干忙しい時間がやっと終わった頃、時間を見計らったように花屋の礼子さんがやってきた。
カラ〜ン コロ〜ン
「こんにちわ〜」
 見ると礼子さんだ。
「いらっしゃ〜い」
 俺と沙耶ちゃんが声を合わせて言った。
 礼子さんはすすっーとカウンター席に来て座った。
「どうしたんだぃ?  今日はお店は?」
 俺が聞くと、
「うん、今はちょっと淳ちゃんがいるから大丈夫。それに……」
「うん? それに……どうした?」
「………」

 俺が質問してるのに、礼子さんが返事をしない。
 礼子さんの様子が何だかおかしい。コーヒーを注文するからコーヒーを入れて出したのに、最初の一口飲んだだけであとは口も付けず、何だかもじもじと落ち着かない様子だ。
《もしやまた何かあったのか?》
 そう思うと迂闊には聞けない。
 何だか俺までもじもじしてきた。

「二人とも変ですよ。何もじもじしてるんですか?」
 堪りかねた沙耶ちゃんが呆れ顔でそう言った。
「あ、分かるうー?」
 礼子さんがそれだけ言うとまた口をつぐんだ。
「何か言いたいことがあるんじゃないんですか?」
 沙耶ちゃんにそう言われ、ようやく礼子さんが話し始めた。
 俺は黙ってことの成り行きを見ていた。
 ここで下手に口を挟むと、前みたいに面倒なことを頼まれそうで恐かった。