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茶房 クロッカス その3

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 九月に入っても暑い日が続いていた。
 あれから……、水無月さんが来なくなってからどれだけ経ったのだろう。
 そんなことを考えていたある日の朝。
「おはようございまーす!」
 沙耶ちゃんが元気に出勤してきた。
「ああ、おはよう」
「マスター、マスター、私、水無月さんに会ったんです!」
「沙耶ちゃん、それは本当なのかぃ?」
「ええ、偶然なんだけど……。友達が入院したことを聞いて、昨日お見舞いに行って来たんです。中央病院に……」
「中央病院って、あそこの?」
 そう言いながら、俺はその方向を手で指した。
「そう、その中央病院です。私の友達は大したことないんだけど、一応お見舞いに行こうかなって思って、入院受付で部屋の番号を聞いて、それを探して行ってドアの前に立って名札を確認したら、『水無月 乱』ていうのが書いてあって、あれっ? と思って……。だって水無月なんて名前そんなにないし。それで中へ入ったら……、水無月さんがベッドにいたんですよっ」
「じゃあ入院してたのかぁ?」
「そうなんですよ!」
「じゃあ来ないはずだよなー」
「――で、何か話したの?」
「もちろんですよ。どうしてこんな所にいるのかと思って……」
 その時の様子を沙耶ちゃんが話してくれた。
「私、声を掛けたんです。水無月さんに。すると――」