シンデレラ・エクスプレス
日曜は私のリクエストで須磨海浜公園に行った。
歩き回ってへとへとになって彼の部屋に帰った。
月曜日は彼の部屋でゆっくりした。
ただ、寄り添ってテレビを見ているだけでも幸せだった。
「来月の連休は俺が東京に行くよ。…でもたまには家にも顔出さないと」
「そうね。最近いつも私とばかり会ってるもんね」
いつもより少し短いスパンで会える事が嬉しかった。だから1日ぐらいいいや…と思えた。
ふふ、と笑った私に
「何?」
「ううん、いつもより次に会えるまでが短くて嬉しいなぁって」
「…付き合い始めの若い子じゃないんだから」
外は雨が降っている。
ひとまずの別れの時間が近付いていた。
夜の新神戸駅に着いた。
ホームで、ぽつりぽつりと話をする。
「あっ!」
「何だよ急に」
「…ネックレス忘れた。誕生日にもらったやつ」
「来月持ってくよ」
「…うん」
私の乗る新幹線がホームに入って来た。
「シンデレラの靴みたいだな」
立ち上がりながら、彼が笑いながら呟いたのを、私は聞き逃さなかった。
乗車口まで一緒に進む。私だけが新幹線に乗り込む。
一刻一刻と、離れなくてはならない時間が近付く。
時間はこっちにお構いなしに進む。
「…じゃあね、また来月」
「あぁ」
あと半月後に会えるんだから、と自分に言い聞かせて泣くのを堪え、顔を上げた時、
「…!」
彼の唇が一瞬重なり、離れた。
「嫌じゃなかったら、来月、一緒に俺ん家行こう」
えっ、と問う間もなく発車を知らせるアナウンスが流れ、彼はホームドアの向こうへ下がる。扉が閉まる。
笑顔で手を振る彼が、遠ざかる。
最後に言われた言葉の意味を噛み締めながら、私は扉の前に立ったまま泣いていた。
トンネルの中を通過する新幹線の小さな窓に、私の泣き顔が映っていた。
作品名:シンデレラ・エクスプレス 作家名:すのう