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シンデレラ・エクスプレス

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エンキョリレンアイ、というヤツになってどれぐらい経つだろう。
週末や連休を使って、お互い行き来する。
でも、東京と神戸というのは、そうそう頻繁に行き来できる距離ではない。
普通の勤め人の私たちには、毎週末東京〜神戸間を行き来できる程の裕福さはない。
メールの便利さをつくづく知る。
スカイプは私が使えないという理由で却下になった。

前回会ったのは先月だった。連休のない月。
お盆休み期間をはずして、金曜の夜に東京に来た彼は、日曜の岡山行き最終で神戸に帰って行った。
「子供の頃にさ、シンデレラエクスプレスってCMあったな」
「…山下達郎の歌の?」
「あれはクリスマスだろ。しかも別れるんじゃなくてこれから会うんだろ」
日曜の東京駅のホームでそんな話をした。
「…シンデレラは覚えてない」
「俺もよく覚えてないけど」
発車のアナウンスが流れる。
「じゃ、帰る。次は…来月の連休か。土日月」
「金曜の夜には行くわ」
その時の往復切符をさっき買っておいた。
「あ、ケーキのおいしいお店。会社の女の子に訊いておいてね」
ぷっ、と彼は笑って、新幹線に乗り込んだ。
「わかった」
「またね」
手を振ると、扉が閉まった。

そして今、金曜日の夕方遅めに東京を出た新幹線に乗っている。
窓の外には、街灯や車、家々の明かりしか見えない。
それがものすごいスピードで後ろに流れて行く。
時速200キロ以上のスピードさえも遅いと感じる。もっと速く速く。

早く会いたい。