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after Today.

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「あ、ありがとう。すごく……嬉しかった」
「うん」
彩香さんはそう言うと窓側の新しい席に移動した。私も廊下側の席を目指す。
 後ろにいた男子には舌打ちされたけれど、特に気にも留めなかった。
 存在しない「明日」。見えないけどそこには確かに明日があった。

   ***

 彼女に陰などなかった。それもそうだ、彼女自身が光を放っているのに。太陽に夜がないのと同じ。
 夢とか、愛とか希望とかっていう、ありふれてて、でもそこら辺にはないものを彼女は全部持っている。私たちが文明の発展と引き換えに失くしたものを。
 私は誇りを持っているんだ。4年に一度しかこない明日に生まれたことに。 それが私と彼女の唯一の共通点であることが嬉しい。 そこの1点だけで、私は彼女を手を繋ぐことができる。
 彼女こそが本当の人間だとするならば、反対側にいる私は一体何なのだろう。
 明日には、望む明日と望まない明日がある。しかし、望まないものがいくらあろうと、そんなもの全て蹴っ飛ばしてしまうくらいに輝いている明日がある。 こんなに輝いて見える1日を望み、 過ごしたことはなかった。
「怜ちゃん、『4歳の』お誕生日おめでとう」
「彩香さんこそ。今度こそ祝うよ、誕生日おめでとう」
「あはは、ありがとう」
 望まない明日の向こう側に、幾つの明日が待っているだろう。そのたったひとつの瞬きで、 生きていけるほど人は強くないけれど、 そこに向かう為に乗り越える幾つもの明日が、 確実に私を変えていくんだ。
作品名:after Today. 作家名:さと