大切な人 後編
来たので、思い出してしまったのだろうか立ち寄ったのだ。
先に雄介は来て座っていた。「ようこそデニーズへ」という店員の掛け声にふと振り向くとそこに懐かしい顔が見えたのだ。
「靖子さん!ここ!」
「雄介さん!」
「久しぶりだね、元気そうだね。どうしたの?誰かと待ち合わせしているの」
「あなたもすっかり元気になったのね。良かったわ・・・一人よ。雨が降ってきたから、なんとなく寄ってみたの」
「いっしょだな・・・僕たちって待ち合わせの約束をしていたんだよ、きっと」
「まあ、うまいこと言って・・・また私を誘惑しようとしているの?」
「イケないかい?」
「イケないわ」
「どうして?ボクが忘れてくれって言ったからか?」
「違うの。目の前のあなたは違う人だから」
「どういうこと?雄介だよ」
「私の雄介さんは・・・ここに居るの」
そう言って靖子は胸に手を当てた。
「過去の人か・・・もう」
「あなたに似た優しい素敵な人だったのよ。この世の中で一番好きになった人。誰とも仲良くしないってその人に誓ったのよ。
ゴメンなさいね・・・雄介さん」
終わり。