大切な人 前編
「誤魔化さないで!いいのよあなたより5歳上なんですから・・・団塊の世代」
「言わなくてもいいのに・・・」
「イヤになったの?」
「違いますよ。自棄になっているみたいに感じたから・・・今のあなただから好きになったんですよ。勘違いしないで下さい。
若すぎてもダメ、本当ですよ」
「庄司さん、優しいのね。あなたのような男性に初めて逢ったの。夫以外何も知らないから許して・・・」
「ボクのことも好きなんですね?」
「はい、だからこうしてきたんですよ。もう・・・引き返せない」
「靖子さん・・・二人だけになりたい!誰も見られていないところで・・・」
「・・・庄司さんの思うままで構いません」
肩に触れた庄司の手はやがて引き寄せるようにして身体を合わせる形になり、唇がそっと重ねられた。
温かい柔らかな感触が身体をしびれさせた。動けなくなっていた。
「好きだよ」
「私もです」
「行きましょう」
「ええ・・・」
車に乗ってもう一言も話すことなく庄司の行こうとしている場所までずっと靖子はうつむいて座っていた。
(後編)に続く・・・