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てっしゅう
てっしゅう
novelistID. 29231
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レイプハンター 後編

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そして同じように服を脱いで眺めた全身も顔と同じように老人に変わり果てていた。少し動いただけで心臓がドキドキしてくる。
本当に体付きだけじゃなく中身まで老人になってしまっていた。もちろん二度と強姦など出来る男性自身ではなかった。

「あの女、やはり化け物だった・・・俺をこんな姿に変えやがって。地獄の話ももしかしたら本当のことなのかも知れない。
なんと言うことだ。どうすればいいんだ」


浩介と別れて帰ってきた翔子は寝る前に明日の朝きっと前田は腰を抜かすだろうと思っていた。
これでよかったのだろうかすこし考えさせられたが、きっと死刑より辛い選択になっているだろう。睡眠の時間だけ
翔子の身体は成長する。それは知的生命体が開放するからだ。女としての若さは友達も驚くほど保たれていた。母親も
ずっと若い翔子を見て嬉しいやら、どうしてなのか疑いたくなる気持ちで複雑だった。免許証の年齢を確認すると、
必ずその相手はビックリする。結婚もしないでずっと使命感に燃えて犯罪防止への取り組みを続けていた。

10年が過ぎて、知的生命体は翔子の身体がこのままの状態を保てないことに気付き始めた。人間のしくみを分析して
かつての自分の惑星での遺伝子構造と似ていることが解ったからだ。自分が占領している期間が長いほど出て行った後の
翔子の身体に変化が大きく見られることを懸念した。ずっと占領していれば開放したとたんに死ぬだろう。それは翔子が
喜ぶことなのだろうか・・・一人の人間としてたとえ無力ではあっても生きられたほうが幸せを感じられるのかもしれないと
思い始めたことでもあった。

「俺はお前から出てゆく・・・直ぐに33才の身体に戻るだろう。この辺が限界だと感じたからだ」
「どうして、私は一生この仕事をやり遂げたいわ」
「気持ちは解る。地球人の気持ちを知って自分とは同じ考えで居れないと気付いた。翔子は女の幸せを手に入れて
家族とともに生きてゆきなさい」
「見捨てるのね・・・もう飽きちゃったの?私の身体は古くなってしまったのね」
「違うよ。気持ちが変わっただけだ」
「ずっといるって初めに言ってくれたじゃない。ウソだったの?」
「そうじゃない。よく聞きなさい。人間として生まれて翔子は幸せになる権利がある。それを俺が束縛し続けることは
したくないんだ。気付いてないのかも知れないが、恋愛をして好きなった男性と結婚して子供を生み育てることは
大切なことだぞ。その営みが永遠に続いてこそ人類は継続され地球はその存在する意味があるというものだ」
「幸せ・・・子供を生むことが幸せなの?」
「それは経験してみると解る」
「あなたはそうじゃなかったでしょ?」
「感情が俺の惑星ではなくなってしまっていたからな。そうなったのは人が進化しすぎたからだ。夢とあくなき
欲望が支配することで、錯覚に陥り、現実の幸せを架空の幸せに置き換えて達成感に浸っていたんだ。その結果
愛情などという感情は邪魔になり捨てるようになった。形式だけの家族と愛し合って作らない子供が誕生した。
長生きなんかしたって幸せじゃない。そうは思わないか?」
「命は限られているからこそ、尊いそして美しいといった人が居たわ」
「そうだよ。おれも間違った一人だ。自分の力でこの地球を変えるなどという奢った気持ちはやがて自分の星が
そうだったようにこの地球もそうなってしまうことに気付かされた。翔子も俺も限りある命になってやれることを
やり遂げて消えることが、その存在している意味だと思える」
「あなたはどうするの?」
「お前の身体を抜けるとあのカプセルが無い限り数日間で大気に侵され分子構造がバラバラになって二度と再生
出来なくなる。つまり死ぬ」
「カプセルはどうしたのかしら・・・気付かなかったわ。大切なものだったのに」
「いいんだ、探さないから」
「どうして?あの中に入れば永遠に生きられるんでしょ?」
「もういいんだ。あの世の存在は自分の中では確実なものになっている。先に行っている妻や子供と会える気がする。
翔子が来るあの世とは違うかも知れないけど、また会えたらいいなあ」
「イヤ!お別れするだなんて・・・せめてあと一年は居て」
「理由はなんだ?」
「理由・・・好きになる人を探すから。あなたに見て欲しいの」
「余り意味が無いぞ」
「意味があるわ。あなたの遺伝子を残すの。次の世代に少しでもあなたの思いを伝えて欲しいの」
「翔子・・・ありがとう。キミに出逢えておれは幸せだったよ。悲しい思いをした翔子を救えたことは俺の
誇りだ。気持ちだけで嬉しいよ。そうさせてもらう。早く見つけてくれよ」
「うん。必ず」

2011年夏にあの想い出の軽井沢へ翔子は玲と舞三人で再び訪れていた。
「10年ぶりね・・・変わらないわねこの辺りは。変わったのは私たち三人の歳と美しさだけね」
「あら、玲、より美しく変わったって言うことよね?」
「そうよ、舞。みんないい女になったわよ。特に翔子は嘘みたいに若いし・・・」
「あらそう・・・不思議なのよね、老けないから。あなたたちみたいに今年はいい人見つけて結婚したいわ」
「へえ~考えが変わったんだ。何かあったの?」
「子供が欲しいって思うようになっただけ」
「そうなの。そろそろ生んでおかないとね。早くても34になるんでしょ・・・きついわね」
「そうなの。ねえ?誰かいい人知らない?」
「まあ、あなたならいくらでも声かけられるでしょう?選り好みし過ぎるんじゃないの?」
「それがね、縁が無いのよ」
「いい女過ぎて避けられてしまうのね、きっと・・・ちょっと年上狙いしたら?それか一層年下なんてどう?
最近流行りだし」
「人事だと思って好きなこと言うのね」
「じゃあ、明日にでもナンパされにぶらぶらする?」
「私たちもついでに遊んじゃおうかしら」
「ご主人が可哀そう・・・なんて人なの!」
「あなただけ美味しい思いをするのはずるいって思うからよ。同じ結婚できないアラサーって言う事にしてよ」
「玲!最低」
「舞はどう?」
「どうって?ナンパされること。お茶ぐらいなら楽しいかも知れないね」
「ほら、翔子。舞だって同じよ」
「知らないから、ばれて揉めても」
「軽井沢よ。ありえないって。ねえ?舞」
「ありえない」

翔子はこんな会話も人間くさいって思えた。今までの自分は強く生命体に支配されてきた。いまはその存在が
薄くなっていて殆ど影響を及ぼさない程度になっていた。一年の約束をじっと密かに待っているのかも知れない。

終わり。