デコトラに宇宙人
「若干ずれちゃうかなーと思ってたんですけどピッタリでしたね」と少女はブレスレットを撫でる。
「え?あ、ああ・・・よかったな」男はまだ状況が飲み込めず少女の言葉に流されてしまう。
「じゃ、荷おろししちゃいましょ!」
「運転で疲れてるでしょうから休んでてください、私やっときますから!」そういうと少女は助手席からおりデコトラの外に出た。
男が呆然としていると少女は軽々と両手に荷物を十個ほど積み重ねながらにおろしを始めていた。
男は口をポカーンとあけたまま運転席に座りっぱなし。
そして、しばらくすると「終わりましたよー!」という声が聞こえ少女が戻ってきた。
「お、おつかれ・・・」男はそれしかいえず固まったままだ。
「いやー!久々に体動かしたので気持ちよかったです!!!」
少女は快活に笑う。
「・・・ありがとう」
ぎごちなく男がそう言うと少女は元気一杯の声で「どういたしまして!」と答えた。
その時少女のブレスレットから「ピーピー」という機械音がなった。
「あ!時間だ・・・そろそろ船に戻らないと」
「・・・そ、そうなのか、何だか色々世話になっちまったな」
「いえいえ、きにしないでください!」
「では、私行きますね」とブレスレットを調節し始める少女を男が呼び止める。
「あ、あのよ、これ、よかったらもってけよ」
男は後ろに積んであった予備の唐辛子煎餅を少女に手渡す。
すると、少女の顔がパッと輝き。
「わー!!!ありがとうございますっ!!!!!大事に食べますね」と言った。
「ああ、じゃあ、きぃつけていけよ」
「はい、あなたも気をつけて!前は見ないと駄目ですよっ!!!」
逆に言い返されてしまった男は噴出してしまう。
そして、少女も一緒になって笑う。
「じゃあ、またな」
男は手を差し出す。
「はい、ではまた!」
少女はその手を握り返す。
そして、デコトラの助手席を光が包み込み・・・男が目を開けると少女は消えていた。
男はフロントガラスに切り取られた空を見上げる。
そして、デコトラのエンジンをかけ出発する。
家族が待つ家へと。