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ミタライハルカ
ミタライハルカ
novelistID. 31780
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デコトラに宇宙人

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深夜の高速道路を派手なトラックが走っている。
所謂デコトラだ。

運転しているのはごつく筋肉質な男。
いかにもトラッカーといった風情である。

だが、その顔には悲壮な表情が浮かんでおり心は焦燥感で一杯だ。

「まさか、あんな所で居眠りしちまうなんて・・・俺としたことが」

時間には十分余裕があった。
それが男の心を油断させたのだろうか。
男は休憩所にトラックを停め休んでいるうちに眠り込んでしまった。

気づいた時にはすでに遅かった。
この時間からでは目的地に荷物を届けるのすら難しい。

「あ~あ・・・すんげぇどやしつけられんだろうなぁ」

そんな言葉を呟きながら憂鬱な顔をしながらハンドルを握る。

しかし、男が憂鬱になっているにはもう一つの理由があった。
今日は息子の誕生日なのだ。

「仕事なんかさっさとおわしてすっげぇプレゼント買ってくるから待ってろよ!」

そういって家をでたにもかかわらずこの体たらく。
これでは誰にも頭が上がらない。

「はぁ~あ、誰か助けてくんねぇかなぁ・・・」

男はフロントガラスからかすかに見える夜空の星々に向かってそんなことを呟いた。

このような憂鬱な気分では運転もままならない。

男は気を紛らわせるためにトラックに付けられた無線のチャンネルを弄り始める。
無線はチャンネルを合わせると近くを走っているトラックと通信できるのだ。

だが、今の男は誰とも話す気などなかった。
ただ、一方的に喋る事によってこの憂鬱な気分を晴らしたかったのだ。

「あ、あ~・・・誰か聞いてるか?」

とりあえず、男は問いかける。
だが、誰からも返答はない。

「まあ、いいや。あのな、実は今日俺仕事中に居眠りしちまってよ。今目的地に向かってるんだがこのままじゃ絶対に間に合うはずねぇんだ。文字通り自業自得ってわけなんだが・・・」

途中まで話した所で男は嘆息する。
少しでも話をすれば気が紛れると思っていたのだがそれはどうも逆効果だったようだ。

男はそこで無線のスイッチを切ろうとした。
だが、その時無線機からノイズが流れ妙な声・・・のようなものが流れてきた。
その声のような物はしばらく音を変化させしまいに話し出した。

「・・・もしもし?聞こえますか???」

無線機の向こう側から聞こえてきたのは意外にも若い女の声だった。

男は驚いた。
女性のトラッカーもいるにはいるが珍しい。
しかし、なにより自分の独り言を聞いてた奴がいることに一番驚いた。

「ああ、聞こえるよ。あんた、もしかして俺の話を聞いてくれてたのか?」

「はい、聞かせてもらいました。どうもあなたが困ってるようなので気になってしまって」

「そうなのか、そりゃ悪かったな。」

「いえいえ、私も暇してた事ですし・・・なんていっちゃ悪いですね」
「そんなことねぇよ、こっちとしちゃ思っても見なかった客だ、嬉しいさ」

「それより続きを聞かせてもらえませんか?」

男は相手の気遣いに驚きながらも自分が置かれている境遇について話した。

「・・・まあ、そんなわけで今目的地に向けてトラックを走らせてんだ」

「そうなんですか~それは大変ですねぇ」

女はのんびりとそう答えた。

もっと同情して欲しい、正直男はそう思った。
しかし、相手にしたら所詮他人事なのだからしょうがない。

だが、男にしてみればとりあえず話し相手が現れただけでも嬉しい。
何しろ話していればこの憂鬱な気分だけはまぎれるのだから。

男は会話を続ける。

「ああ、大変だよ、目的地まで随分と距離も残ってるしついたら確実にどやされるしな。全くたまったもんじゃねーや!」

気づいたら顔も知らない相手に向けて愚痴を言っていた。
男は内心「しまった」と思った。

が、相手はそんなことお構いなしに話し続ける。

「なるほどなるほど、気持ちはわかります。私も一応同業者ですからね~」

「・・・わりーなそっちも仕事中だってのに愚痴っちまってよ」

「いえいえ、お気になさらず。」

無線機の向うの女は男の謝罪に対しそう答える。
男は話し相手を失わずに済んだとホッと胸を撫で下ろす。
それで気が緩んだのか男は内心一番気にしている事をつい口にしてしまう。

「あ~あ・・・しかし、息子の誕生日にもまにあわねぇっつーのはいてぇよ、正直」

「息子さん?お子さんがいらっしゃるんですか???」

「ああ今年で小学生になるんだけどよ。これがまた元気でな。うるさくて仕方がねーんだ。」

「かわいくて仕方がないみたいですねぇ、良いお父さんです」

そういって無線機の向うの女は「うふふ」と楽しそうに笑った。

「ああ、かわいいよ。だから、誕生日には間に合わせてーんだ・・・でもな」

「よし!わたしに任せてください!!!」

女は自信満々にそういった。
無線機の向うで女が胸をはりその胸を片手でぽんとたたいてる姿が男の頭に浮かんだ。

「あぁ!?どういう意味だ?」

「じゃ、今からそちらに行きますね・・・っとその前に自動操縦モードにきりかえっと」

そんな意味不明の言葉と共に無線は切れた。

結局、誰かの悪戯だったのか・・・と男はガッカリする。
話し相手がいなくなってしまったのもさびしい。

しかし、気を抜くわけには行かない。
前方を見つめハンドルを握りなおす。

が、次の瞬間、真っ暗な高速道路をひた走る派手なデコトラの助手席が光り輝いた。
男はあまりの輝きに瞬間目をつぶってしまう。

デコトラのハンドルを握る手が緩みデコトラが派手に揺れる。
夜の高速を派手に彩るデコトラが車線を軸にグラグラとカーブする。

が、しかし、男は瞬時に気持ちを建て直しハンドルを握りなおす。
後ろを走っていた車がデコトラを追い抜きながらクラクションを鳴らした。

危うく横転させてしまう所だった。

光が収まり男に余裕ができた頃。
隣の助手席に誰かがいた。

「驚かせてしまってごめんなさい!」

そういいながらぺこりと頭を下げる金髪碧眼の少女。

「これ、どうしても移動するときに光が出ちゃうんですよねぇ・・・それが困り物で」

と言いながら、腕につけたブレスレットをいじくっている。

男はしばらくの間前を見るのも忘れ助手席に座る美しい少女に魅入っていた。
が、しかし、「危ないっ!」という少女の声でやっとわれに返りハンドルを切る。

前方を見ると道がカーブしており危うくそこに突っ込む所だった。

「はぁ・・・よかった~!運転中はちゃんと前見ないと駄目ですよ!」

少女は自分が原因でこんな事態に陥ったというのにもかかわらずまじめな顔で男に注意する。

しかし、今の男の頭にそんな言葉は入るはずもなくしっかりとハンドルを握りながらもパニックに陥っていた。

誰だこいつ?
何処から来たんだ?
最近ご無沙汰だからこんな夢を見るのか?

様々な思いが男の頭を錯綜する中少女は話し出す。

「あなたが困っていたので助けに来ちゃいました!」

「・・・ああ、ありがとな」

男はとりあえず礼を言ってしまう。
完全に相手のペースに乗せられている。

それも仕方のない事だ。
突然助手席にわけのわからない女が現れたのだから。