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ミタライハルカ
ミタライハルカ
novelistID. 31780
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ラーメンのできる間に

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「明日までここでゆっくりしてけば?」というユウの誘いはありがたかったが、さすがにそこまでお世話になるわけにもいかず、ナツは「大丈夫、この先でテントでもはるよ。」といって店の外に出た。

ユウはわざわざ店先まで出てきて見送ってくれた。
自転車に乗り込みヘルメットを被りユウの方を見ると若干さびしそうな表情をしていた。

そして、最後にお互い「じゃあね」といって分かれた。

しばらく走った後店の方を振り返るとユウはまだ店の外におりこちらを見ていた。

少しの間自転車を停めユウに向かって手を振るとむこうも振りかえしてくれた。

その後、適当な場所にテントを張り寝袋にもぐりこむと一日中自転車をこいでいた疲れもありすぐに眠気が襲ってきた。

翌朝、何かでテントを叩く音で目を覚まし外に出てみると工事現場の誘導員が「やっと
起きたか」といった。

そして、誘導員は「邪魔だから早くそのテントどかしてくれよ」といって去っていこうとした。

ナツは状況が飲み込めず思わず誘導員を呼び止める。

「こ、ここら辺て確か林道でしたよね?」

「なに言ってんだアンちゃん?ここらへんはずーっとまえに整備されて木なんか一本もなくなっちまったよ。みりゃわかんだろ。」

と、誘導員が指差した方を見ると確かに周囲には木など一本も生えておらず、綺麗に整備された道路と歩道が走っていた。

そして、昨晩自分が林の中に立てたと思ったテントはその歩道のど真ん中に立っていた。

だが、混乱したナツはまだ状況が飲み込めず、必死に昨晩の事を思い出そうとする。

夜の林道を走っていた自分。
その途中にあったコンビニ。
そこで三分間だけ話し合ったユウと言う名の少女。

しかし、コンビニの名は思い出せない。
だが、その代わりナツはユウに貰った割り箸に書いてあった店の名を思い出す。

「じゃ、さっさとそのテントどけてくれよ」といいながら持ち場に戻ろうとする誘導員を呼び止めそのことを聞いた。

「すいません、「鐘楼軒」というお店知りませんか?」

誘導員はしばらく悩むようにしてから「・・・ああ、確かそんな店もあったっけなぁ・・・でも、ここら辺は新しく道が出来るっていうんで側にあった店はあらかたどっかへいっちまったよ」といった。

その場に呆然と立ち尽くすナツ。

では、昨日自分が経験した事は一体なんだったのだろうか?

そんな自分の記憶があやふやになる恐怖の中ナツはある事を思い出す。
それはユウがくれた古びたコンパス。

昨晩の出来事が本当ならばズボンのポケットに入っているはずだ。
恐る恐るポケットに手を入れるナツ。

手に硬い物が当たる感触。
ナツは思い切ってそれを取り出す。

太陽の下で見たそれは確かに昨晩ユウがナツに渡してくれたコンパスだった。
思わず、ナツはその場で「夢じゃなかったんだ!」と叫んでいた。

そんなナツを遠くから奇異の目で見る誘導員。

しかし、そんなことには気づきもせずしばらくの間コンパスを天に掲げてはしゃぎまわった後ナツはコンパスを見つめる。

古びたコンパスはその機能を失う事無く北と南を指し続けている。

だが、ナツにはコンパスの針がさす物はそれだけではないような気がしていた。
この先にユウがいるコンビニがあるような気がしてならない。

そこにはあの変な休憩室がありユウが気持ちよさそうに寝ているはずだ。
彼女の大好きなおばあちゃんの思い出たちと一緒に。

ナツは急いでテントを片付けとめてあった自転車に荷物を積み込む。
そしてユウから貰ったコンパスを片手に走り出す。

再びユウに会うために。