そして冒険は続く
ルークにはそれがこの巣の主が独身である理由である気がしてならない。
で、何でかはしらないが自分の未来を想像し落ち込んだ。わけもわからず。
まあ、そのことはおいといて。
ルークが何かを思いついたようだがどうもその思い付きに抵抗があるようだ。
それをティアが促す。
もう、抵抗しても無駄だと思い思い切ってその「作戦」をティアに耳打ちするルーク。
「よし!じゃあ、はじめっか!!!」
「うん、やるしかないね!!!」
お互い自分に言い聞かせるように言葉を掛け合う。
まず、巣に置かれたクッションや座布団を業務用冷蔵庫まで運びありったけ中に詰める。
そしてその中に二人が入るとティアが炎系の魔法の詠唱を始める。
詠唱が終わるとティアから炎が放たれ業務用冷蔵庫の周りの糸が焼ききられる。
業務用冷蔵庫が落下し始めるとルークがドアを閉める。
そして再びティアが炎系の魔法の詠唱を始める。
そして、また冷蔵庫が巣に引っかかるとルークがドアを開けティアが炎を放ち冷蔵庫の周囲の糸を焼ききる。
それを何度も何度も繰り返す。
穴の底につくまで!何十回も!!!
これが先程ルークがティアに耳打ちした作戦の内容だった。
「なんですぐいってくれなかったの?」
ティアはルークからこの「作戦」を聞きすぐにそういった。
「いや・・・あまりに他人だよりっつーかさ・・・大体作戦ていえねーだろ?こんなの」
「まあ、そうかもしんないけどさ・・・このまま何もしないよりはマシ!」
「わかった!つーか、大体お前の魔力持つのかよ?底までどのくらいあるかわかんねーぜ」
若干うつむき加減にそういうルークにティアは自信満々にしかも笑みさえ浮かべ
「あたし、大丈夫だよ!やれる!!!」
といった。
ティアにそこまで言われてしまってはルークとしても引き下がれない。
やるしかない!
しかし何度も何度も詠唱を続けるティアは目に見えて消耗が激しい。
それを側で見守るしかないルークは歯軋りした。
「なんて無力なんだ俺は・・・こんな時にドアを開けることしかできねーなんて!!!」
そして、地面まで巣一つ分という所でティアはついに力尽きた。
ルークはグッタリと業務用冷蔵庫の中に倒れるティアを見つめる。
「せめてこいつだけでもまもらねーとしめしがつかねーティアねーか!!!」
ルークは覚悟を決め冷蔵庫のドアを開ける。
「くるならきやがれってんだ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
蜘蛛と素手の勝負で刺し違えるつもりでいたルークはそこであるものを見つける。
そして不敵な笑みを浮かべる。
「ひょっとしたら神様ってのはいるのかもしんねーな!ここでこいつにあわせてくれるっつーんだからよ!!!!!!!」
ルークの目の前に立ちふさがった蜘蛛はなんとルークがこの穴に落ちたときに落とした剣をくわえていた。
そして側ではその蜘蛛の妻らしき蜘蛛が食事をテーブルに載せている。
「奥さんわりーな!!!だんなの命は俺が貰う!!!!!!!!!」
そんな主人公とは程遠いあくどく古臭いセリフを口にしながらルークは「無骨で馬鹿でかく頑丈」な自分の得物を掴み蜘蛛ごと薙ぎ払う。
そして「うお~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!!!」という咆哮と共に業務用冷蔵庫の周りの糸を切り裂く。
最後の糸から開放された業務用冷蔵庫はドスンという重い響とともに穴のそこに落ちた。
土煙の中冷蔵庫のドアを開け顔を出すルーク。
剣を構え周囲に敵がいないかどうか確認しティアの様子を見る。
消耗しきったティアはまだ目を覚まさない。
しかし大事な巣を焼かれたのだ蜘蛛たちは怒り狂いすぐにでも追いかけてくるだろう。
ルークはティアを背負い逃げ道を探す。
しばらくしてうめき声と共にティアが目を覚ました。
「・・・ルーク、あたし達助かったの?」
「ああ、何とか助かったぜ!!!お前のおかげだよ!それにこいつも戻ってきたしな」
ルークは片手で自分の得物を構えてみせる。
「よかった・・・あたしはまだ駄目っぽい・・・ごめんね」
「気にすんなよ、しばらく俺の背中で休んでろ!」
ルークがそういい終える前にティアは目を閉じてしまう。
「・・・絶対たすけてやる!」
小声でルークは誓う。
上からは蜘蛛たちがおってくる
絶体絶命の状況でルークは偶然にも横穴を見つけた。
「正直何があるかわかんねーけど・・・前に進むっきゃねーだろ!!!」
ルークはティアを背負いながらその横穴に駆け込む。
「・・・な、ティア」
背中に目をやりそう小声で語りかける。
ティアはまだ目を閉じたままだ。
二人の冒険は続く。