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ミタライハルカ
ミタライハルカ
novelistID. 31780
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真夏の雪

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「あ、ありがと・・・わかった返しとく」

わけもわからず礼を言ってしまう。

「よし!じゃ出発だ!!!・・・と、いいたいとこだけど、こいつらを乗せる車がねー・・・」

「う~ん・・・車は無いけどリアカーならあるかも・・・」

「お!それでいいや!!早速取りに行こうぜ!!!」

まあ、非常時だし借りちゃっても良いか・・・後で返せば、と半ば無理やり自分を納得させリアカーを取りにいく。

そしてリアカーを昇降口まで運び二人で慎重にきな粉玉を運びリアカーに積んでいく。
最後のきな粉玉を私がつみ終えると作業を終え側で突っ立ってる彼が言った。

「しっかし・・・誰がのっとってんだかわかんねーけどさ、ありゃあぶねーよなぁ・・・」

両手を頭の後ろで組みのんびりとした口調でそういう彼の視線の方に目をやると学校の目の前の住宅にいる霊に体をのっとられた主婦が電子レンジにありったけの調理器具を入れてスイッチを入れようとしていた。

勿論そんなことをすれば・・・

直後に爆発音が聞こえる。
私は反射的に頭を両手で抱え込んでしまう。

「大丈夫、無事だよ・・・髪の毛の方は無事じゃねーみたいだけどな!あははは!!!」

見ると主婦の頭は爆発して見事なアフロヘアーになっていた。

「ちょっと・・・危ないと思ったらとめなよ!」

怒っては見たものの私もその見事なアフロヘアーに釘付け。
しまいには一緒になって大笑いした。

散々笑った後私達二人は顔を見合わせる。

「準備できたな!」

「うん!」

「じゃいこうぜ!祭りの始まりだ!!!」

ちょいそのノリについていけずタイミングをはずして返事。

「・・・お、おぅ!」

そんなことまるで気にせず彼は走り出す。最初から猛スピードで。
はじめのうちは何とかついていけたが段々と距離が離れていく。
早くも限界を感じ始め心のそこから彼にまったをかける私。

「ちょ・・・ちょっと待って・・・速すぎ!」

足がもつれる。
それを見て男はリアカーを引張る足を止める。

「なんでぇい体力ねぇなあ、姉ちゃん!じゃあ俺の車にのんな!!!」

そんな時代錯誤な言葉と共に親指をビッと立てる仕草に思わず笑ってしまう。

リョウ君がまさかこんなアクティブになっちゃうなんて。
中身は違うし性格はちょい問題ありだけど・・・。

私は世界を自分ひとりだけで抱えようとしていた。
いつも一人で抱え込んでいた。
それがとてつもなく辛かった。

しかし彼の登場はそんな私の思い込みをあっさりとぶち壊した。

今の私の目の前には彼がいる。
それがとてつもなく嬉しく思わず笑ってしまう。
こんな非常時だというのに楽しくて堪らない!!!

笑っていたひざに力が入る。
もう怖い物なんて無い。
彼と一緒なら何処までも行ける。

そう思うと全身に力が満ちてきた。

「やっぱ走る!!!」

彼はニヤリと笑う。

その後、私達は町中を走り回り彼があらかじめセットしておいた筒にきな粉玉を詰め次々と点火していった。

そして、最後に学校に戻り屋上に上る。

その頃には既にあたりは暗くなり始めていた。

しかし、中々花火は上がらない

「不発?」
「かな?」

私達は顔を見合わせる。

彼の顔には若干不安そうな表情が浮かんでいてそんな顔を見つめているとこちらまで不安になってくる。

しかし、しばらくするとドーン!と大きな音が鳴り響き私達は驚いて同時に地面に尻をついた。

空を見上げると上空ではきな粉玉が大音響と共に無事見事な大輪の花を咲かせていた。

「びっくり」
「したー!!!」

二人の声がハモる。

次々と続く耳を劈くような花火の音。
そして、夜空を彩る様々な色達。

ようやく立ち上がった私達は屋上の手摺によりかかりながらしばらくその風景を眺めていた。

そして花火が終わると大量のきな粉が町に降り注ぐ。
季節外れの金色の雪が輝きながら町中に降り注ぐ。

霊たちにのっとられた人間達は意識を失い倒れていく。
そして、その体から霊達が湯気の様に天に向かって還っていく。

きな粉まみれになりながら彼は笑う。

「あははははははは!!!これって最高じゃねーか!!!!!きな粉花火」

私は何も答えない。
いや答えられない。
ただ後ろを向いて表情を隠す。

「・・・」

「はーあ・・・これでようやく終わりだな」

その言葉を聞き思いがあふれ出た。
彼に伝えたいことが沢山ある。
お礼だって言いたい。

「また、来年会えたら会おうぜ・・・」

ようやく振り向き彼を見る。
だが、もうそこに彼はいなかった。
ただ目を閉じたリョウ君が横たわっているだけだ。

後から後から涙が出てきて止まらない。
でも、涙を拭いて最高の笑顔を作る。
そしてその最高の笑顔を天に向け叫ぶ。

「また来年もきてよね!!!絶対忘れちゃだめなんだから!!!!!」

力の限りそう叫ぶ。

私がごしごしと制服の袖で涙を拭いていると後ろでかすかにうめき声が聞こえリョウ君がゆっくりと起き上がり私に声をかける。

「・・・ここどこ?なにしてんの俺・・・あれ?はつかさん・・・だよね?」

私は頷く。

「そうだよ、リョウ君が倒れたから様子を見てたの」

「そうなんだ、ありがとう・・・しかしなんだろうからだが凄くだるい」

体のそこからこみ上げる笑いをこらえ切れず私は大笑いしてしまう。
それをふしぎそうに見つめるリョウ君。

「そりゃ倒れるくらい走ってたもん・・・で、実際倒れたし?」

その言葉を聞き不思議そうな顔をする
そして何かに気づくリョウ君。

「あれ?眼鏡が無い・・・メガネ、メガネ・・・」

そんなベタベタなギャグのようなセリフを言ってるリョウ君に彼から渡されたメガネを差し出す。

「あ、ありがとう・・・」

私から受取ったメガネをかけるとようやく辺りの異変と私のくたくたになった巫女服姿を見つめて目を丸くする。

「え!?それ?巫女!?なんで???それにこのきな粉・・・一体」

私はその問いに対し正直に告白する。

「実は私除霊師やってるの・・・で、毎年お盆はこんな感じに仕事をしてるんだ」

私は巫女服の乱れを直し降り注ぐきな粉を手のひらに乗せリョウ君に差し出す。

「これが私の武器!・・・なんちゃって!」

しげしげと私の手のひらの上のきな粉を見つめるリョウ君。

「そっかぁ・・・だからはつかさんお盆近くなると眠そうにしてたんだ」

驚きはしたもののリョウ君はどうやらなんとか理解してくれたようだ。

「それよりさ、これ見てよ・・・凄いよね!」

私は屋上の手摺の所まで歩いていく。
その後をテクテクと付いてくるリョウ君。
そして二人で手摺に寄りかかり町中に降り注ぐ金色の粉雪を眺める。

「うん、凄い!こんな真夏に・・・まるで真夏の雪だ。」

真夏の雪、それはチグハグな言葉だったけれど綺麗なとても響きをしていた。

「そうだね・・・真夏の雪、いいかも!」

「また、見たいな」

「見れるよ、ううん、見よう一緒に!これからずっと!!!」

思いもしない言葉が口をついて出た。
こんな勇気をくれたのも彼かもしれない。

「うん」

少し照れながら答えるリョウ君。
作品名:真夏の雪 作家名:ミタライハルカ