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漢字一文字の旅  第一巻(第1編より第18編)

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十四の四  【文】


【文】という字、少し恐ろしい。
昔、死者の復活を願い、魔除けに胸に文身(入れ墨)を入れた。それが正面を向かって立つ姿だとか。

そんな【文】、熟語はなんと言っても『恋文』だろう。
古い日本語では『懸想文(けそうぶみ)』と言う。なにか思わず「懸賞文」と読んでしまいそうだが…。

京都に須賀(すが)神社と言う小さな神社がある。節分になると、覆面をした二人の男が現れ、懸想文を売るそうな。
妖しげなオッサンが恋文を道端で売るのだから、これはまことに奇妙奇天烈。
買えば、良縁に恵まれるとか、商売繁盛に利くとか。なぜ商売繁盛なのか、これはもう変ちくりんの極みかも。

さてさて、時は平安時代。小野小町は女流歌人だった。
一説によれば、秋田県湯沢市小野生まれ。六花の秋田美人だ。

そして、現代でもよくある話しだが、昔々、一人の郡司がその地に単身赴任をしていた。
雪深く心寂しかったのか、村の娘と恋に落ちた。そして、小町が生まれた。
やがて郡司の任期は明け、男は都へと戻って行った。それを母は悲しみ、男を追って、雪山越えで遭難。
その後、小町は残されたお守りを頼りに、都へとのぼる。そして更衣(こうい)として仕え…歌人デビュー。