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漢字一文字の旅  第一巻(第1編より第18編)

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十一の一  【絆】


【絆】、馬を繋ぎ止めておく綱のこと。
平安時代の辞書「和名抄」に、この意味で載っているとか。

熟語は、行動を束縛する「覊絆(きはん)」、足に巻き付ける「脚絆(きやはん)」、他に馴染みの「絆創膏(ばんそうこう)」がある。
四字熟語では、座右の銘にしたいと人気のある「不屈不絆(ふくつふはん)」。
どんな困難にあっても挫けず、束縛も受けない、「独立自尊」と同等の意味とか。

そんな【絆】(きずな)、二〇一一年の漢字一文字となった。
地震、津波、原発の大きな三災害があり、その復興に向けての家族、友人、国民の【絆】が注目された。
だが、この【絆】という字、訓読みでは【絆(ほだ)される】(ほだされる)。
情に【絆】されて、金を貸してしまったなどと、あまり前向きには使われてこなかった。

夏目漱石は草枕の冒頭で言った。
「智に働けば角が立つ。情に棹(さお)させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい」と。
この「情に棹させば流される」が、「情に絆(ほだ)される」ということらしい。

しかし、今回、【絆】は「情に絆される」という世界から、「愛」という字と同レベルの、人にとって大事な漢字へと進化したのだ。