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漢字一文字の旅  第一巻(第1編より第18編)

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十の四  【青】


【青】、上部は「生」で、草の生え出る形で、青々と茂っている。また下部は「丹」で、顔料の青丹。いずれも青色ということだ。

そんな【青】、昭和三〇年頃、菅原都々子(すがわらつづこ)は…
♪♪ 月がとっても青いから 遠まわりして帰ろう ♪♪ と歌った。

これは日本人の感性。
確かに月が青く見える時がある。
しかし、それが西洋となると…「blue moon」(ブルームーン)。

ブルームーンなんて、彼らにとって滅多にないことなのだ。
"once in a blue moon" (ワンス・インナ・ブルームーン)
こんな熟語があり、意味は「決してあり得ないこと」を言う。

だが、これが火星となると随分と変わってくる。
ここでは夕焼け。
火星の昼間の空は赤い。そして陽は落ちて、夕焼けとなると【青い】のだ。
理由は、火星の大気がほとんど二酸化炭素。そこに酸化鉄の微粒子が一杯。
昼間はその散乱で赤く、太陽が地平線に傾くと、赤色が飛び散り過ぎて、青色だけが目に届くからだそうだ。

♪♪ 夕焼け小焼けの赤とんぼ ♪♪
これはどうも地球だけの歌。
火星では青焼けで、
♪♪ 夕焼け小焼けの 【青】とんぼ ♪♪ と歌詞が変わる。

だが生活は四苦八苦の我が身、
♪♪ 助けて 助けて 【青】色吐息 ♪♪ と、火星に行かなくとも…【青】一色なのだ。