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漢字一文字の旅  第一巻(第1編より第18編)

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十の三  【苺】


【苺】、「草」冠の下に「母」。
この字体は、「母」の株からどんどん子株を増やして行くからだとか。

そんな【苺】(いちご)、四〜六月が旬。
だが最近は一年中店先に並ぶ。
高価だが、五個食べれば、一日に必要なビタミンCが摂取できる。
ビタミンCは血管/骨/筋肉の形成に必要なコラーゲンの生成を促し、日焼けを防ぐ。またキシリトールも含まれ、虫歯対策にもなる。その上に、その甘さは砂糖の四分の一と低カロリー。
まさに黄金のフルーツと言いたいところだが、学術分類でいけば野菜だとか。

そんな【苺】に白書がある。
正式名は、『The Strawberry Statement』(いちご白書)。

これは実話であり、時はキャンバスが学生運動で揺れていた一九六六年から一九六八年。場所はコロンビア大学。
改革の推進活動をする学生達が学部長事務所を占拠した。それに対して、学部長はラジオ放送でこう述べた。
「学生達の主張は大事だが、学生たちが【苺】が好きだと言う程度のもので、重要ではない」
これが「苺ステートメント」、「白書」なのだ。

筆者も、あの学生運動の頃から随分と歳を重ねてしまった。
「【苺】が好きだと言う程度のもの」と評されてしまったが…それでもやっぱり好きで、囓(かじ)ってみたい。

そこには赤くて甘酸っぱい…一粒一粒との、

【苺】一会、 イチゴイチエがあるのだ。