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漢字一文字の旅  第一巻(第1編より第18編)

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九の四  【遊】


【遊】は、道を行く意味を持つ「しんにゅう」。
その上に、神霊が宿っている旗を建てて出行する形の上の字を乗せている。
そこから神霊が遊ぶこととなり、さらに発展し、人が興のおもむくままに行動して楽しむこととなった。
白川静先生は「遊字論」の中で、【遊】について次のように説明されている。

遊ぶものは神である。
神のみが、遊ぶことができた。
【遊】は絶対の自由と、ゆたかな創造の世界である。
それは神の世界に他ならない。
この神の世界にかかわるとき、人もともに遊ぶことができた。

そんな【遊】、芭蕉が奥の細道の序文の元にもしたが、李白の「春夜桃李園に宴するの序」にある。

夫(そ)れ天地は 萬物の逆旅(げきりよ)にして
光陰は 百代の過客(くゎかく)なり
而(しか)して 浮生は夢の若し
歡を爲(な)すこと 幾何(いくばく)ぞ
古人燭を秉(と)り 夜に【遊】ぶ


この中にある言葉・『秉燭夜遊』(へいしょくやゆう)。
これがまことに素晴らしい言葉なのだ。
その意味は、人生は儚(はかな)く短いもの。
だからくよくよせずに、夜更かしして、『夜遊び』しましょう、というものだ。 

簡単に言えば、『夜遊び』の大奨励。
そんな『秉燭夜遊』、座右の銘にしている輩がいるとか。
えーい、それに賛同して、元々【遊】は神だけに許された行いだが、
思いっ切り…【遊】んじゃいましょう!

参考: 奥の細道の序文
月日は百代の過客にして、行きかふ年もまた旅人なり。
舟の上に生涯をうかべ馬の口とらへて老を迎ふる者は、日々旅にして旅を栖とす。
古人も多く旅に死せるあり。