漢字一文字の旅 第一巻(第1編より第18編)
当時の常識から行けば、淀殿は秀頼を生んではいたが、格式は京極家の松の丸の方が上。
秀吉は、こんな女の争いにただただオロオロするだけ。
それを、
「ちょっとあなたたち、今日は花見よ。楽しくやりなさいよ」
こう取りなしてくれたのが、利家の妻、まつだったとか。
これで秀吉は…ホッ!
こんな女の大喧嘩、しかし、淀殿と龍子の二人はしっかり詠っている。
しれっと、適当に…秀吉に胡麻擦って。
淀殿
『花もまた 君のためにと咲き出でて 世にならびなき 春にあふらし』
松の丸殿、龍子
『打群れて みる人からの山櫻 よろづ代までと 色にみえつつ』
しかし、こんなお姉様たちの様子を見ていた一番年下の…二六歳の摩阿姫。その後、続けて詠った。
『あかず見む 幾春ごとに咲きそふる 深雪の山の 花のさかりを』
この歌の裏の意味は、
「もうやってられないわ、私帰りたいわ。また違う誰かと醍醐の花見に来るわよ」ということらしい。
その証拠に、この花見の後に、摩阿姫は直ぐに側室を辞意しているのだ。
とにかく、いつの世も女は恐ろしいものなのだ。天下を取った秀吉さえコントロールできなかった。
ツののはえた女が気(木)にかかる。
【桜】という漢字が、そう教えてくれている。
作品名:漢字一文字の旅 第一巻(第1編より第18編) 作家名:鮎風 遊