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漢字一文字の旅  第一巻(第1編より第18編)

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五の六  【桜】


【桜】、元は【櫻】で、「木」と「嬰」(えい)の組み合わせ。
この「嬰」、その由来は貝二つを女が首飾りにしたところからだとか。
しかし、これではわかりにくい。

【櫻】は、二階(貝)の女が気(木)にかかる。
【桜】は、ツののはえた女が気(木)にかかる。
こんな解釈もあり、こちらの方が納得し易い。

そんな【桜】を愛でて楽しむのが、花見。

時は今から約四〇〇年前のこと。
豊臣秀吉・六二歳は伏見城から出て、その亡くなる年に、盛大に「醍醐の花見」を執り行った。

その時の女性たちの順位は、もちろん本妻の北の政所、ねね(五一歳)が一番。
その後に側室が続く。
しかし、これがまた歳が近いためか、実にややこしい。だが、秀吉は悩み抜いて、次のように決めた。

二番目が、織田信長の姪っ子の茶々、淀殿二九歳、なぜなら秀頼を生んだから。
三番目が、武田元明の正室だった松の丸殿、京極龍子。
四番目が、織田信長の六女で、三の丸殿。
五番目が、前田利家とまつの三女の摩阿姫の加賀殿二六歳。

だが、秀吉の危惧した通り文句が噴出した。
秀吉の杯をまず受けたのが北の政所。ここまでは全員納得、それで良かった。

しかし、次は誰かと。
秀吉は自信なかったが、淀殿に杯を渡した。

そこで、たちまち…「ちょっと、待った!」と。
松の丸殿、龍子が睨んできて、

「なぜ、私が二番じゃないの」と…えらい剣幕。