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漢字一文字の旅  第一巻(第1編より第18編)

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十五の六  【葱】


【葱】、漢字は難しいが、馴染みのある「ねぎ」。
下は「怱」で、(にわか/あわてる)と読む。
それに草冠が乗せて、なぜ「ねぎ」となるのかわからない。

臭いのきつい野菜は五葷(ごくん)と呼ばれている。それはにんにく、にら、らっきょう、あさつき、そして【葱】。
禅寺の山門の脇の石に刻まれてある。「葷酒(くんしゆ)山門に入(い)るを許さず」と。

そんな【葱】だが、東日本は白ネギ。西日本は青ネギとなる。
そして、分葱(わけぎ)。これはネギとエシャロットの雑種だとか。
これに酢と味噌が合わさって「ぬた」となる。

京都ではひな祭りの節句料理として、京野菜の九条葱とイカ、それを白味噌と和えて「てっぱい」となる。
かって香川県では、農繁期が終わり寒ブナを捕り、それを和えた。その寒ブナが「鉄砲」と呼ばれていたから、「てっぱい」だとか。
フナの代わりにイカを入れての「てっぱい」、【葱】の臭みとともに、春の来訪を祝う味だ。

いずれにしても、【葱】、歳を重ねるごとに、うどん、そば、ネギ焼き、それに「てっぱい」と食す量が多くなる。
このように、より馴染み深くなっていく漢字なのだ。