漢字一文字の旅 第一巻(第1編より第18編)
二の二 【穴】
【穴】、中国の黄土地帯では地下の家に住んだ。その土の部屋への入口の形だとか。
不思議の国のアリス。
それは一八六五年に、イギリスで出版された児童文学。作家は数学者だと言う。
アリスは白うさぎを追い掛け、【穴】に落ちる。そして、身体を大きくしたり小さくしたりして、言葉を話す動物たちの世界を冒険する。不思議な話しだ。
ワンダーランドへと通じるこんな【穴】。なぜか歳を重ねても忘れられない。
だが、世間には好まない【穴】もある。
その一つが「空っ穴(からけつ)」。財布の中が空っぽなのだから、堪らない。
そして、【穴】の中には、だいたい何かがいたり、何かあったりするものだ。
「虎穴に入らずんば虎児を得ず」
危険はあるが、勇気を持って飛び込めと…、そう急かされてみても、やっぱりビビッてしまう。
それに比べ、一生に一度は味わってみたい【穴】がある。
それは『大穴』だ。
しかし、普段の生活、巣穴にじっと引き籠もるような穴子状態では、そんな【穴】には絶体に巡り逢えない。
否、そう雖(いえども)も…。
勇気と幸運がない限り、とにかく【穴】に近付かない方が良いのかも知れない。
作品名:漢字一文字の旅 第一巻(第1編より第18編) 作家名:鮎風 遊