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炎舞  第一章 『ハジマリの宴』

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                 一
 
 雨に混じった土と草の匂いが、鼻孔を擽る。
 明かりなどない林の中を、三人の若者は慣れたように歩みを進めていた。
 濡れた前髪を鬱陶しそうに掻き上げながら、眉間に皺を寄せ溜め息を吐く風間。水溜まりの中へ喜んで入っていく幼児のように、突然の雨に肩のガルーダと共にはしゃぐ美世。嵐は思案顔で、先頭を黙々と歩いて行く。暗闇の中で煌めく彼女の目の色は、薄んだ紅。
(火の男……あいつの目。私と同じ、紅だった―――)
 冷が掴んだブラウスの襟にそっ、と触れ、彼の目を思い出しながらゆっくりと瞬く。ただ美男子というだけでは済まされぬ、将の風格を漂わせていた男。涼やかな目に影を差していた、「憂い」。
(…気にしすぎ、…かな)
 今だまとわりつく彼の「氣」から逃れるように、嵐は足を速めた。
 鬱蒼とした空間が開けたその先に、突如、立派な作りの木造邸宅が現れる。人目を隠れるように建つ屋敷は二階建てにも関わらず、マンション並みの幅の広さ。三人は重々しい門の金具を響かせ、歴史を感じさせる荘厳な邸宅へ入って行った。
「―――おや、帰って来たかい。……案の定、荷が重すぎたようだね」
 屋敷の一室。ソファに腰かけ、手に持つ本の字からするりと視線を外す。赤みを帯びた黒い髪とは対照的に、忍び服から白いタートルネックに着替えた緑子は、無事に帰って来た三人の気配を感じ取り、安堵の息を洩らす。
「えっ? 帰って来ましたか?」
 緑子の声が聞こえたのか、襖を通して隣りの部屋から少年の声。彼女が返答する間もなく、少年は勢いよく緑子の後ろを駆けて行く。
「こらっ、テスト勉強は終わったのかい!?」
 その言葉にピクッと肩を震わせたが、少年は荒々しく廊下への扉に手をかけ、逃げるようにその場を去った。
「まったく…」
 呟いた緑子の耳には、長い廊下を騒がしく走る音が遠ざかっていった。