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炎舞  第一章 『ハジマリの宴』

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「嵐ーっ!!」
 腹の腑、全てを吐き出すように、激しく叫ぶ風間の声が聞こえる。
「あっ!嵐ちゃん!よかった~大丈夫だった?」
 意識を取り戻した美世の声。嵐の姿を見つけると、弾けた笑顔で駆け寄って来て抱きつく。後ろから風間も現れ、安堵した表情のまま嵐の元へ寄った。
「ケガねぇか? ―――仙龍のヤツは?」
「消えたわ。私達も撤収しましょう。眠りの香が切れたのか、辺りが騒がしくなってきてるわ」
 耳を澄ませると、人の騒ぎ声やパトカーのサイレンの音が聞こえる。
「…そうだな。行くか」
 風間と美世は小さく頷き、闇の中へ消える。
 残された嵐も歩を進めるが、ふと、夜空を見上げた。にわかにぽつりと、天から降ってきた小さな滴が嵐の頬を濡らす。
 先刻まで月が出ていたはずだ。雨の予兆など微塵もなかった。しかし、今天を仰げば、嵐の不安を象徴するかのように灰色の雲が集まってきている。
 やがて、土砂降りの雨。
 夜と同じ色の髪を雨に滴らせながら、
「殺せたはずなのに……どうして」
 ぽつりと呟いて、彼女も夜の闇に消えた―――――。  

               一幕 完