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表と裏の狭間には 十五話―球技大会―

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「そんなしょっちゅう飲んだりしてるんじゃないんだし、大丈夫だよ。煌たちだって今のところピンピンしてるでしょ?」
まぁ、それはそうだが………。
レンはそんな事をいいながら、自分と俺のグラスとジョッキに酒を注ぐ。
「ま、今日の勝利を祝して、乾杯。」
カチン、と、雫とレンのグラスと、俺のジョッキが音を立てる。
「なぁ、何で俺のだけジョッキになみなみと注がれてるんだ?」
「気にするな。」
「いや、気にするよ。」
「心配しなくても、君のは割ってあるから、酒の量的にはボクたちと変わらないよ。」
「そうか………。」
その割には味が濃い気がするんだが………。
「勿論ポカリで割ってあるから安心してね。」
「安心できるか!ぶっ倒れるだろうが!」
ジョッキの中身をぶちまけたくなった。
「冗談だよ。ま、量は結構入ってるけど、ボクと雫ちゃんがグラスなのは男女差を考えたからだよ。」
「お前この間はジョッキで飲んでたじゃねぇか!」
「チッ、ばれたか……。」
「はぁ………まぁいいや。」
げんなりとしながら溜息を吐く。
「クス…………クスクス。」
そんな忍び笑いが聞こえて横を向くと、雫が必死に笑いをこらえていた。
「お前はお前でどうした?発狂したのか?」
「だって………お兄ちゃんたちのやり取りが………面白くて………クスッ。」
懐かしい、と思った。
五年前も、俺とレンでこんな馬鹿馬鹿しいやり取りをして、横でそれを見ていた雫が笑ってるというのが常だった。
先月レンと『再会』してから、俺はこんな懐かしい思いを何度もした。
そして、懐かしさと共に、自身の幸福を噛み締めていた。
もう二度と、こんな事はないと思っていたのに。
それは、パズルのピースが嵌まったかのような感覚。
例えばロミオにジュリエットがいたように。
いや、そんなロマンティックなものじゃないか。もっと俗っぽい例えを使おう。
雛見沢に圭一が転校してきたように。SSSに音無が入隊したように。シャナが悠二の前に現れたように。インデックスが上条の部屋のベランダに降ってきたように。桐乃がメルルのケースを落としたように。暦が忍と出会ったように。アリアがキンジを助けたように。
そんな風に、『在るべきものが在るべきように』がっちりと。
運命の歯車が噛み合うように。
それは、多分『当たり前』ということだ。
傲慢?いや、そうじゃない。
そうであるべきことがそうであるべき、それを『当たり前』という。
そしてそれは、最も幸せなことだ。
今の俺は、その幸せの真っ只中にいる。
俺の横でレンと笑って会話している雫を見る。
次いで、レンを見る。
二人――俺が最も大切にしている二人――とも、こんなに幸せそうに、心から。
多分、俺も笑っているのだろう。
隠し事は多々あれど、それでもなお。
それらを全てひっくるめて。
互いを認め、尊重し、そして愛し。
最小で、最高のコミュニティ。
世界で最も尊いものが、今、俺の手の中にあった。
「じゃ、今日は飲むか。」
「その調子その調子。」
「お、お兄ちゃん?飲みすぎには気をつけてね?」
馬鹿話に笑い転げながら、夜は更に更けていく。

ちなみに。
球技大会は、一回戦の勢いのままに圧勝を続け、そのまま優勝してしまった。
ストーリーにも何にもならないが、まあ現実なんてそんなものだ。

続く