表と裏の狭間には 十五話―球技大会―
「バスケするわよ!」
「「「「「おぉおおおおおおおおおおおお!!」」」」」
「ちゃんと説明しろぉおおおおおおおおお!!」
きちんと説明しよう。
今は六月中旬。
この時期、この学校では球技大会があるのだ。
今年の種目はバスケ。
で、有閑倶楽部の人数が九人(引越し以降レンと雫が入部した)なので、ゆりが参加を決定したわけだ。
今は有閑倶楽部の部室にいる。
そこで九人、固まって部の活動方針を決めていたのだ。
「バスケするわよ!」
「「「「「おぉおおおおおおおおおおおお!!」」」」」
「ちゃんと説明しろぉおおおおおおおおお!!」
と、いうことだ。
「お前らノリだけで参加決定してんじゃねぇよ!」
「そうですよ!きちんと説明してください!」
「ボクからもお願いするよ。説明してくれ。」
バカ六人と常識人三人が対立していた。
「じゃぁ説明するわ。球技大会が近く開かれるのは知ってるわね?」
「ああ、そりゃぁな。」
「それに出るんだよ。」
「出るのか。」
「ちなみに参加登録は済んでるっすよ。」
「オイ!」
「もうメンバー表も提出済みなの。」
「もうちょっと予定とか参加意思とか聞けよ!」
「……作戦の説明を開始します。」
「人の話を聞けぇええええええええ!!」
「無駄無駄無駄無駄無駄!わっちの前に敵無し!」
「色々なネタが混ざりすぎてる上に突然すぎて何が言いたいのかさっぱりだ!」
「………紫苑、諦めよう。これは天災なんだ。」
「……………………そうだな。」
相手が悪かった。
「じゃぁ作戦を説明するわ!完全なるパワーゲームよ!」
「いっそ清々しいほど単純だな。」
「だってプロ――ごほん。このメンバーのほとんどは運動が得意なのよ?」
今、口を滑らせかけたな。
「だから、以下のように設定したわ。」
『先発: 四番 星砂 煌
六番 星砂 輝
七番 星砂 耀
八番 蘭崎 礼慈
九番 宵宮 理子
待機: 五番 楓 ゆり
十番 柊 紫苑
十一番 雅 蓮華
十二番 柊 雫 』
「何でこの配置なんだ?」
「最初は煌を中心として一気に攻めるわ。とにかく取れるだけ点を取りなさい。ハーフタイムで交代するわ。スタミナのある煌を据え置いて全員チェンジ。あたしと煌のコンビネーションを中心に攻めるわ。そのままとどめよ。」
「えげつねぇ………。」
「メンバーがチートだからな。当然だ。」
「そういう問題じゃない気がするが………。」
「守備も結構考えてるわよ。あたしと煌の呼吸は抜群だし、輝と耀も素早いわ。理子と礼慈もサポートが上手いし、紫苑とレンなら最強じゃない。」
「何で俺とレンが最強なんだ?」
「あなたたちチームワーク抜群じゃない。」
何故分かった。
「一緒に暮らしてれば嫌でも分かるわよ。二人のどっちかが何かをする時、大抵残りの一人が必要なものを用意してるじゃない。」
「…………。」
「しっかり見られてたね。」
レンが苦笑する。
確かに、俺が食事当番の時なんかは、レンが手際よく手伝ってくれていた。
他の時でもそうだ。
一緒に作業するときは、大抵互いに助け合って効率を倍にも三倍にも伸ばしていた。
「で、レンから雫ちゃんを経由してあたしに繋げば問題ないわね。」
「まぁ、そう考えれば合理的な配置ではある………か。」
レンなら俺がどこに投げるかも予想できるだろうしな。
雫も俺とレンが何をするかよく分かっているだろうし。
「細かいポジションは適当に決めていいわ。じゃ、今日は解散。」
数日後。
俺たちは体育館で、バスケの練習に励んでいた。
「去年は人数が足りなくて断念したけど今年は今年こそはふふふふふ………!!」
ゆりがなんだか怪しいオーラを発しながらボールをドリブルしている。
「なぁ、何でゆりはあんなになってるんだ?」
「あー、それはなぁ………。」
煌は頭を掻き毟りながら、ステージの上に置いてあった紙を手にとって俺に渡してきた。
「それだよ、それ。」
その紙には球技大会の要項が書いてあった。
賞品とかも。
その中に、こんなものがあった。
『学食無料チケット一か月分』
『あー…………。』
俺だけじゃなく、雫や蓮華まで納得した。
「じゃ、そろそろマジで練習するわよ。」
ゴールにダンクを決めた(平均的な背の女子がダンクとか在り得ねぇ)ゆりが、こちらを向いて号令をかける。
「じゃ、とりあえずはロウきゅーぶ的なノリでメイド服でも着てもらうっすかね。」
「色々と無理があると思うの。女子四人しかいないの。」
「反応するところそこじゃないわよ!」
まぁ、こいつらはいつも通りだな、本当に。
「とりあえず、全員バスケの基本は分かってるわよね?」
「ああ。中学で習った。」
「私も習いました。」
「ま、細かいルールとかは後でやるとして、今日はパス回しとシュートの練習をしましょう。二人一組になってボールを持ちなさい。紫苑と蓮華と雫ちゃんは三人でお願い。」
ゆりに言われて、それぞれに分かれてボールを持つ。
いつも通り、ゆりと煌、輝と耀、礼慈と理子、そして俺たちというグループになった。
なんだかんだ言って、もう誰と誰がくっつくのか決まっているんだな、こいつら。
「へいへい!そっちは両手に華で羨ましいねぇ。わっちもあやかりたいよ。」
「うるさい。メンバーが奇数なんだから仕方ないだろ。」
理子が茶化してくるのを無視して、パス練習を開始する。
「ボールは軽く持って、両腕と手を使って、三角形を描くような形でやりなさい。そのまま腕全体を使って真っ直ぐ押し出すの。」
パン、パン、と小気味いい音を響かせながらボールをやり取りする。
レンは運動もそこそこできるのか、安定したパスを繰り出している。
雫はそのパスを受け取る事はできるようだが、どうにもパスが安定しない。
まぁ、こいつは運動苦手だしな。
「このパスが基本よ。チェストパスってやつね。次はワンハンドパスよ。ワンハンドはこうやって――」
そのままゆりの指導でパス練習を続ける。
ショルダー、オーバーハンド、アンダーハンド、フック。
煌とゆりは、ビハインドパスという、背中を通して出すパスの練習もやっていた。
しかし、こうやってみるとバスケのボールはかなり重い。
打ち出すのも受け取るのも、割と力が要る。
俺もレンも汗だくだし、雫はへたってしまっている。
そんな俺たちの様子に気付いたのか、ゆりが停止の命令を出す。
「よし、今日はこれまで。じゃ、ボールしまって、撤収しましょ。」
今日は土曜日で、本来なら学校はないのだが。
俺たちは体育館を借りて練習していたわけだ。
現在時刻は一時八分前。
このあとはボールを片付けて、シャワーを浴びて、学食で昼食を食うという流れになりそうだ。
「紫苑、疲れたねー。」
「理子………。またお前か。」
「どうする?メシでも食う?シャワー浴びる?それともわっちを喰べる?」
「お約束過ぎて一瞬聞き流しそうになったが、最後以外の全部だ。誰がテメェなんか。普通にシャワー浴びてメシを食う。お前は女子の中で大人しくしてろ。」
「へー。そういう態度とるんだ。それならわっちにも考えがあるんだけどなー……。」
「…………なんだよ?」
こいつ、たまに随分と俺の分が悪い取引を持ちかけてくるから、少し警戒する。
「「「「「おぉおおおおおおおおおおおお!!」」」」」
「ちゃんと説明しろぉおおおおおおおおお!!」
きちんと説明しよう。
今は六月中旬。
この時期、この学校では球技大会があるのだ。
今年の種目はバスケ。
で、有閑倶楽部の人数が九人(引越し以降レンと雫が入部した)なので、ゆりが参加を決定したわけだ。
今は有閑倶楽部の部室にいる。
そこで九人、固まって部の活動方針を決めていたのだ。
「バスケするわよ!」
「「「「「おぉおおおおおおおおおおおお!!」」」」」
「ちゃんと説明しろぉおおおおおおおおお!!」
と、いうことだ。
「お前らノリだけで参加決定してんじゃねぇよ!」
「そうですよ!きちんと説明してください!」
「ボクからもお願いするよ。説明してくれ。」
バカ六人と常識人三人が対立していた。
「じゃぁ説明するわ。球技大会が近く開かれるのは知ってるわね?」
「ああ、そりゃぁな。」
「それに出るんだよ。」
「出るのか。」
「ちなみに参加登録は済んでるっすよ。」
「オイ!」
「もうメンバー表も提出済みなの。」
「もうちょっと予定とか参加意思とか聞けよ!」
「……作戦の説明を開始します。」
「人の話を聞けぇええええええええ!!」
「無駄無駄無駄無駄無駄!わっちの前に敵無し!」
「色々なネタが混ざりすぎてる上に突然すぎて何が言いたいのかさっぱりだ!」
「………紫苑、諦めよう。これは天災なんだ。」
「……………………そうだな。」
相手が悪かった。
「じゃぁ作戦を説明するわ!完全なるパワーゲームよ!」
「いっそ清々しいほど単純だな。」
「だってプロ――ごほん。このメンバーのほとんどは運動が得意なのよ?」
今、口を滑らせかけたな。
「だから、以下のように設定したわ。」
『先発: 四番 星砂 煌
六番 星砂 輝
七番 星砂 耀
八番 蘭崎 礼慈
九番 宵宮 理子
待機: 五番 楓 ゆり
十番 柊 紫苑
十一番 雅 蓮華
十二番 柊 雫 』
「何でこの配置なんだ?」
「最初は煌を中心として一気に攻めるわ。とにかく取れるだけ点を取りなさい。ハーフタイムで交代するわ。スタミナのある煌を据え置いて全員チェンジ。あたしと煌のコンビネーションを中心に攻めるわ。そのままとどめよ。」
「えげつねぇ………。」
「メンバーがチートだからな。当然だ。」
「そういう問題じゃない気がするが………。」
「守備も結構考えてるわよ。あたしと煌の呼吸は抜群だし、輝と耀も素早いわ。理子と礼慈もサポートが上手いし、紫苑とレンなら最強じゃない。」
「何で俺とレンが最強なんだ?」
「あなたたちチームワーク抜群じゃない。」
何故分かった。
「一緒に暮らしてれば嫌でも分かるわよ。二人のどっちかが何かをする時、大抵残りの一人が必要なものを用意してるじゃない。」
「…………。」
「しっかり見られてたね。」
レンが苦笑する。
確かに、俺が食事当番の時なんかは、レンが手際よく手伝ってくれていた。
他の時でもそうだ。
一緒に作業するときは、大抵互いに助け合って効率を倍にも三倍にも伸ばしていた。
「で、レンから雫ちゃんを経由してあたしに繋げば問題ないわね。」
「まぁ、そう考えれば合理的な配置ではある………か。」
レンなら俺がどこに投げるかも予想できるだろうしな。
雫も俺とレンが何をするかよく分かっているだろうし。
「細かいポジションは適当に決めていいわ。じゃ、今日は解散。」
数日後。
俺たちは体育館で、バスケの練習に励んでいた。
「去年は人数が足りなくて断念したけど今年は今年こそはふふふふふ………!!」
ゆりがなんだか怪しいオーラを発しながらボールをドリブルしている。
「なぁ、何でゆりはあんなになってるんだ?」
「あー、それはなぁ………。」
煌は頭を掻き毟りながら、ステージの上に置いてあった紙を手にとって俺に渡してきた。
「それだよ、それ。」
その紙には球技大会の要項が書いてあった。
賞品とかも。
その中に、こんなものがあった。
『学食無料チケット一か月分』
『あー…………。』
俺だけじゃなく、雫や蓮華まで納得した。
「じゃ、そろそろマジで練習するわよ。」
ゴールにダンクを決めた(平均的な背の女子がダンクとか在り得ねぇ)ゆりが、こちらを向いて号令をかける。
「じゃ、とりあえずはロウきゅーぶ的なノリでメイド服でも着てもらうっすかね。」
「色々と無理があると思うの。女子四人しかいないの。」
「反応するところそこじゃないわよ!」
まぁ、こいつらはいつも通りだな、本当に。
「とりあえず、全員バスケの基本は分かってるわよね?」
「ああ。中学で習った。」
「私も習いました。」
「ま、細かいルールとかは後でやるとして、今日はパス回しとシュートの練習をしましょう。二人一組になってボールを持ちなさい。紫苑と蓮華と雫ちゃんは三人でお願い。」
ゆりに言われて、それぞれに分かれてボールを持つ。
いつも通り、ゆりと煌、輝と耀、礼慈と理子、そして俺たちというグループになった。
なんだかんだ言って、もう誰と誰がくっつくのか決まっているんだな、こいつら。
「へいへい!そっちは両手に華で羨ましいねぇ。わっちもあやかりたいよ。」
「うるさい。メンバーが奇数なんだから仕方ないだろ。」
理子が茶化してくるのを無視して、パス練習を開始する。
「ボールは軽く持って、両腕と手を使って、三角形を描くような形でやりなさい。そのまま腕全体を使って真っ直ぐ押し出すの。」
パン、パン、と小気味いい音を響かせながらボールをやり取りする。
レンは運動もそこそこできるのか、安定したパスを繰り出している。
雫はそのパスを受け取る事はできるようだが、どうにもパスが安定しない。
まぁ、こいつは運動苦手だしな。
「このパスが基本よ。チェストパスってやつね。次はワンハンドパスよ。ワンハンドはこうやって――」
そのままゆりの指導でパス練習を続ける。
ショルダー、オーバーハンド、アンダーハンド、フック。
煌とゆりは、ビハインドパスという、背中を通して出すパスの練習もやっていた。
しかし、こうやってみるとバスケのボールはかなり重い。
打ち出すのも受け取るのも、割と力が要る。
俺もレンも汗だくだし、雫はへたってしまっている。
そんな俺たちの様子に気付いたのか、ゆりが停止の命令を出す。
「よし、今日はこれまで。じゃ、ボールしまって、撤収しましょ。」
今日は土曜日で、本来なら学校はないのだが。
俺たちは体育館を借りて練習していたわけだ。
現在時刻は一時八分前。
このあとはボールを片付けて、シャワーを浴びて、学食で昼食を食うという流れになりそうだ。
「紫苑、疲れたねー。」
「理子………。またお前か。」
「どうする?メシでも食う?シャワー浴びる?それともわっちを喰べる?」
「お約束過ぎて一瞬聞き流しそうになったが、最後以外の全部だ。誰がテメェなんか。普通にシャワー浴びてメシを食う。お前は女子の中で大人しくしてろ。」
「へー。そういう態度とるんだ。それならわっちにも考えがあるんだけどなー……。」
「…………なんだよ?」
こいつ、たまに随分と俺の分が悪い取引を持ちかけてくるから、少し警戒する。
作品名:表と裏の狭間には 十五話―球技大会― 作家名:零崎