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僕と彼女の夏休み

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僕には同い年の幼なじみがいる。彼女の名前は真希。保育園の頃から仲良くしている女の子だ。彼女の家は、僕の家と僕らがよく遊びに行く公園の間にある。僕はいつも公園に行くとき必ず彼女を誘う。彼女も僕のことを待っててくれる。これは幼稚園の頃からずっと続いている僕たちの決まり事だ。こういう事を大人達は暗黙の了解というらしい。
小学生になって二回目の夏休み。今日も僕は公園に遊びにいこうとしていて、その途中彼女の家にきた。僕にしてみたらちょっと高めの位置にあるインターフォンを押す。いつも通りの行動。でも、何故か出てきたのは彼女ではなく彼女のお母さんだった。

「あら、勇気君。今日はどうしたの?もしかして真希と遊ぶ約束してた?」

遊ぶ約束、その言葉がしっくりこなくて反応に困ってしまった。僕と彼女はいつも遊ぶ約束なんかしないから、彼女との遊ぶ約束と他の子とする遊ぶ約束が同じものに思えなかった。たぶん僕は困った顔で彼女のお母さんを見つめていたのだろう。僕と同じ目線になるように屈みもう一度「勇気君?」と言った。僕は今抱えたもやもやをどうにかしたくて必死に言葉を紡いだ。

「いつも真希ちゃんとは遊ぶ約束してないけど遊ぶんだ。今日も遊ぶ約束してないけど、昨日何も言ってなかったから今日も一緒に遊べるんだと思ったんだ。」
上手く言葉にできず、でも言いたい事はそれなりに言えた事に少しほっとした。

「そうなんだ。でも、ごめんね。今日は真希ちょっとお出掛けしてるの。帰ってきたら真希に勇気君が来た事言っておくね。」

「うん。真希ちゃんのお母さん、明日だったら真希ちゃんと遊べる?」

「明日は真希、何も無いと思うから遊べると思うよ。」

「わかった。じゃあまた明日来るね。真希ちゃんのお母さん、ばいばい。」

「勇気君、気をつけてね。」

そのあと僕は一人で公園に行った。公園といってもそこは空き地に砂場とブランコ、木のベンチを置いたとてもシンプルな場所で、自分一人で遊ぶとなると物足りない場所だった。他の子供を誘えばいいと思うかもしれないが、ここらへんには自分たちと同い年の子はあまり住んでいないし、まず家の場所が分からない。照りつける日差しとまとわりつく汗にウンザリし僕は家へと足を向けた。涼しい部屋でアイスキャンディーを舐めてる自分を想像しながら。
翌朝、いつもより早く家を出た。昨日一日遊ばなかっただけなのに、まるで久しぶりに彼女と遊ぶかのような不思議な気持ちになってしまい落ち着かなかったからだ。昨日と同じようにインターフォンに手を伸ばす。そのとき彼女がドアから出てきた。

「あ!勇気君おはよう。」

「おはよう、真希ちゃん。今からまたどっか出掛けるの?今日もあそべない?」

彼女はちょっと驚いた顔をしてから何故?という顔をした。

「今日は遊べるよ。昨日はごめんね。私、勇気君に言い忘れちゃってたんだ・・・。」

「べ、別に気にしてないよ。ただ、いつもは前の日に遊べないことを言うから珍しいなってちょっと思っただけなんだ。」

本当にごめんね、ともう一度彼女が謝り、僕たちは公園へと歩き出した。公園では最近二人のなかで流行っている砂のお山作りをして楽しんでいた。

「お水すぐに無くなっちゃうね。」

「そうだね。あ、次は私がお水持ってくるよ。」

「うん。」

そういいバケツを持って水道の方に行く彼女。水は彼女に任せ、僕は夢中になってトンネルを掘り続けた。土が乾いてきてしまい山が崩れ始めたので、バケツを持った彼女の姿を探した。彼女は日陰の方で何かをじっと見つめていた。

「真希ちゃん、何してるの?」

「え?あ、勇気君。あのね、前はココにもお日様の光が当たってたのに、隣が工事し始めてから光が当たらなくなっちゃったから可哀相だなって思って。」

彼女の視線の先には、誰が埋めたかわからない沢山の白と黄色の花が咲いていた。夏休みに入ってからし始めた工事のせいでそこは日陰になってしまっており、花が育つには十分な環境とは言えなかった。僕は「優しいね。」と言おうとしたが、恥ずかしさや照れが勝ってしまい、結局黙ってお花を見つめる事しかできなかった。居心地の悪い、しんみりとした空気が二人を包む。彼女は急に立ち上がり、

「急に変な事言ってごめんね。今日は暑いし、もう公園で遊ぶのやめてうちで遊ばない?前に話してたゲーム買ったから一緒にやろう。」

と言った。前に話してたゲーム、それは最新型のテレビゲームのことだ。僕もずっと欲しいと思いながらもお小遣いが足らずに諦めていたものだ。早くこの空気を無くしたかった僕は、やりたかったゲームも出来るとあって遠慮せず、彼女に誘われるがままにお邪魔した。ゲームの電源を入れるのに時間がかかるんだー、っていいながら彼女は電源を入れ、二人でどのカセットをやるか選んでいた。選び終え、カセットをセットしている彼女に問いかける。

「いつの間に買ったんだよ。あ、昨日買ったのか?」

「うん、買ったんじゃなくて抽選で当たったんだけどね。」

「え、すごいね。僕、抽選でハズレしか引いた事ないよ。今まで本当はあたりとかって抽選の中に入ってないと思ってたし。」

「私も思ってた。あ、始まったよ。」

それからは二人で時間も忘れて楽しんだ。彼女のお母さんが時間を教えてくれるまで、外が夕暮れになってる事にも気づかなかった。少し名残惜しかったけどその日はもう帰る事にした。

「真希ちゃん、ばいばい。またゲームさせてね。」

「うん。勇気君もばいばい。」

いつものようにさよならをした。ドアを閉め家へと帰る。少しいった先でまたドアが開く音がした。

「勇気君、待って。」

「え?真希ちゃんどうしたの?」

後ろから追いかけてきたのは真希ちゃんだった。

「あ、あのね私、明日から遊べなくなっちゃったんだ。」

「え・・・明日からって、ずっと?」

「いつまでかわかんないけど、また遊べるようになったらいうね。遊べるようになったらね、勇気君を私だけの秘密の場所に招待してあげる。」

そう言って彼女は自分の家に戻っていった。僕は急すぎて反応できなかったが、明日からの夏休みは今までと違ってつまらないものになるだろう事だけわかった。
それからの日々は家で過ごす事が多くなった。最初の一週間は他の友達と遊んだりもしたのだが、最近はみんなおばあちゃんの家に行くとかでいなくなってしまった。僕もどこか他の場所に連れてってもらいたかったけど、今年はお父さんもお母さんも忙しいらしくその事について期待は出来無かった。そうして夏休みの残りが十日間となった今日、僕は誕生日を迎えた。毎年彼女がプレゼントを持ってきてくれたのだが、今回はそれは期待できそうになかった。何故なら、あの日から僕はまだ彼女と会えていないからだ。いつも祝ってくれる彼女がいない分落ち込んだ。しかし、今年の誕生日はお母さんがお仕事をお休みして、僕の行きたいところへ連れてってくれると言っていた。今日はお母さんと何をしようか、そう考えていたとき
作品名:僕と彼女の夏休み 作家名:珠音