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Super Girl

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 後に立った男に肩口からまわされていた手がまっすぐ私に向けられることで、刃物による束縛から開放された瞬間、包丁を持つ手に、逆関節気味に打撃点をずらした菩薩掌を繰り出し、男の肘を壊す。
 男が包丁を落すと、腕の下をくぐり、体を外に出しながら男の手首を両手でしっかりと掴み、全体重を乗せて捻る。
 というよりも、身体ごと回る、と言った方が正しい表現になるのだろう。
 それはまるで、フォークダンスで回る女の子のように。


「やあぁぁぁ!!」

 ごきゅ!!

 男の肩が外れる音が聞こえた。
「押さえろ!」
 私が叫ぶと、どこに隠れていたのか分からないぐらい大人数の警備員が一斉に飛びかかった。肩が外れている男は抵抗らしい抵抗もできずに取り押さえられた。

 私は『してやったり』という得意満面の笑みを湛えている娘を見た。
 なんて恐ろしい技を。こんな事を教えるのは吉原以外にいない。
 彩さんがいない日でも吉原の家に通っていたのは、これのためだったのか! 吉原め! なんて危険なものを教えるんだ。
 せめて私に一言教えておいてくれ。

「美樹、今のは?」
「え? 護身術よ」
 さすがにバツが悪そうな顔をしている。
「誰に習った?」
 誤魔化すのは無理と悟った娘は、小さくため息をついた後、小声だったけれども、ハッキリと言った。
「すみれさんに」

 なぁにぃぃぃ!!!!!
 すみれめ!! なんて危険なものを教えるんだ!!
 彩さんがいない日は吉原の家に行く振りしてすみれのところに行っていたのか! なんてことだ!!

「早く行こう」
 娘はそう言ってせかせかと歩き出した。

 いや、警察にいろいろ訊かれたりするだろう? 
 いいのか? さすがに良くないだろう?

「警察が来るまで待っててもらえませんか?」
 銀行の警備員が娘を呼び止める。
 すると、立ち止まった娘の背中にみるみる殺気がみなぎっていくのが見て取れた。
 警備員もそれを感じたのだろう。

「飛行機に間に合わなかったらどうしてくれるんですか!!」

 すごい迫力だった。
 そういうところも妻とそっくりになった。

 警備員は気圧されて何も言えなくなってしまったようだ。
 私は振込用紙の裏側に電話番号と住所・氏名を走り書きし、『十日後に連絡してくれ』という言葉を添えて、警備員に手渡した。
作品名:Super Girl 作家名:村崎右近