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雨宮 レイ
雨宮 レイ
novelistID. 31607
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ユートピア

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友達が死んで、一ヶ月が経ったある日。僕はここに来た。

ここは意外にも高くて、遠いところまで見渡せる。

町の灯り。行き交う人々。車。雑居ビル。

しかし何処にも『ユートピア』は視えない。

季節は今、冬なので吹く風が冷たい。まして夜ならなおさらだ。

体が震え、歯がガチガチと音を立てる。だが、不思議と寒さは感じなかった。

目の前にある二メートルぐらいのフェンスをよじ登り、ようやくここに立つことができた。

友達も以前、立っていた場所。



『生と死の境界線上』



友達も以前、飛び降りた場所。本当はすぐにでも行きたかったが、

自殺事件のおかげで、つい最近まで立ち入り禁止となっていたから、

ここに来ることはいままで出来なかった。

しかし、一ヶ月も経てば、高校生が一人自殺した程度の事件なんて、すぐに風化する。

立入り禁止も解かれた。だから僕はここに来た。

作品名:ユートピア 作家名:雨宮 レイ