顔合わせ
「驚いたわ。祐樹にも意外に実行力があったのね」
祐樹の左隣の席の、去年やっと嫁ぐことができた姉の孝子が云った。
「自分でここを予約したんだってね」
孝子の夫の山中卓も、祐樹の顔をにこやかな表情で眺めている。
五人が揃ってからほぼ五分経ったとき、高浜優奈とその家族の、総勢四人が、和服姿の女性従業員に案内されて入って来た。
優奈とその両親と、優奈の妹の絵里香は、いくらか緊張した面持ちで現れた。そのとき、初対面のはずの優奈の妹は、祐樹を見てあっ!と声を挙げた。
「えっ!?知り合い?」
殆ど全員が驚いていた。しかし、絵里香は慌てて否定した。その顔を祐樹は思わず凝視めてしまったが、相手の最初の反応には、彼も驚かされるばかりである。見覚えのない顔だからである。
「山ね!祐樹さんも絵里香も登山が好きだから」
そう云ったあと、優奈は笑顔になった。祐樹は優奈にも、登山をさせたいと思っていた。
上座の祐樹の父の左隣に優奈の父が座り、テーブルの角を挟んで優奈の母、その左に優奈、その左に絵里香が着席した。