合コン
田野倉の真っ赤な車が、町田駅から遠くない住宅地を走っている。午前八時になる十五分前だった。駅の方向がよく判らない。高い車を買ったので、カーナビを買う余裕がなかった。彼は車を停めた。
地図を見ていると、車が揺れ始めた。また地震かと、彼は不安を覚えた。ミラーに白いコートの娘が映っている。その娘が車の後部を上から押して揺らしていたのだった。田野倉は慌てて車の外に出た。
「おはようございます。住所、教えちゃったんでしたっけ?」
藤沢友香は困惑した表情になっている。
「酔ってたから、憶えてないんですね」
教えられたのは携帯の番号だけだった。
「電話番号も教えました?」
田野倉は車の中から携帯電話を出してきて操作した。友香の電話が鳴りだした。
「あっ!教えたんですね。飲み過ぎましたね。少し頭が痛いんですよ」
「そういうときは深呼吸です。どうして飲み過ぎたのか、あとで教えてください」