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天井の目

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『天井の目』



 何故かとよく訊ねられるのだが、其の理由を話すとなると、先ず、暫く前の夜の事から話さないといけなくなるのだ。



 さて、そろそろ眠ろうかという時分の事だ。
 仰向けで布団を胸元まで引き寄せ、確りと寝る体勢を整えて、其れから手を伸ばして枕元の灯りを消すのが、何時もの就寝直前の行動である。
 だが、此の日は如何にも勝手が違った。
 横になったは良いが、手を伸ばそうとした所で、私は其れに気付いた。

 天井に目が有ったのである。

 其れが何であるかを理解するまで、悠々と三分ほどを費やしたのは、私の理解力が足りないからでは無いと、先に弁解しておこう。
 目といっても、木目などでは無い。檸檬の様な楕円であり、真中にまあるく黒い瞳孔があり、其の周りは白であった。詰まるところ、人間の様な目だ。薄暗い灯りの中であるのに、人の顔程にも大きい目が、嫌にはっきりと見える。
 其れが、此方をじっと見詰めていたのであった。

作品名:天井の目 作家名:北屋