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てっしゅう
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愛されたい 第十章 新しい家族

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第十章 新しい家族


ホテルで行われた歓迎レセプションには地元の有名企業や展示館の協賛企業が集まっていた。その中には間瀬の伯父も顔を見せていた。会場入り口の受付で記念品を渡して名簿のチェックをしていた智子に伯父は声を掛けた。

「やあ、智子。やってるな・・・そのスーツ姿似合うよ。仕事終わってからでもいいから時々家に顔出せよ。ここまで来ているのだから」
「伯父さん、今日はありがとうございました。この仕事やってゆけそうです。はい、寄らせていただきます」
「今日は帰りどうするんだ?泊りじゃないだろう?」
「帰りますよ。ご心配ありがとう。自分で帰れますから大丈夫です」
「そうか、飲んでいるのなら気をつけて帰れよ。じゃあな」
「はい、そうします」

伯父は何か話したかったようだがまた中に入っていった。名簿に書かれてある来賓のすべてが来場したので受付は終了して智子もお役ごめんとなった。直ぐに横井にメールした。
「今仕事終わりました。どうしましょう?」
「ホテルまで行ってもいいけど、気まずいよな・・・近くのコンビニに着いたら電話してくれ。迎えに行くから」
「解りました。そうします」

会場内に居た館長と伯父に挨拶を済ませて、外に出た。この時期夜風はひんやりと感じる。足早に通りの向こう側に見えたコンビニに向かった。
「ホテルの反対側にあるコンビニに居ます」電話をした。
「10分ほどで行くから待ってて」

智子は中に入って、雑誌を見ていた。そして奥のバックルームから出てきた店員を見てハッとなった。
「敏子じゃない!どうしたの?」
「智子!・・・そうか今日だったんだね、オープンは。私ここでパートしてるの。とりあえず仕事見つからなかったから、手っ取り早くコンビニにした」
「そう、水商売は止めたんだ。良かった」
「あなたに言われて、これ以上落ちるところまで行ったらダメだって思ったの」
「働きながらいいところ見つかったら替わればいいのよ。私も探してみるから」
「それよりここで何してるの?智子は」
「うん、人を待ってるの」
「誰?彼が出来たの、まさか・・・」
「敏子、まさかよ」

敏子は智子がそんなことをする女じゃないと思っていたから驚いていた。「いらっしゃいませ」の声に続いて入ってきた横井が近づくのを見て、本当だと知らされた。

「智子、紹介してよ」
「横井さんって言うの。偶然だけど同級生がここで働いていたから、驚いた。中野・・・でよかったわね?敏子さん」
「横井です。初めまして。綺麗な方だ・・・智子と同じで」
「初めまして。中野です。嬉しいことを・・・智子、素敵な方ね・・・うらやましい」
「敏子、私ね・・・離婚したの」
「うそ!・・・私と同じになったの?信じられない、あなたが離婚するなんて」
「時間の問題だったから落ち込んでいないけど、20年間を返して!って言いたいわよね、お互いに」
「ほんと、そう。でも智子はこれからラブラブになるんだから、いいじゃない。私はなんだか寂しいわ」
「敏子なら、直ぐ見つかるって・・・ねえ?横井さん、大丈夫よね?男性から見てどう?」
「素敵ですよ。きっと直ぐ見つかりますよ」
「あら、簡単に言われるのね。ご紹介して頂けるのかしら?」
「敏子!言い過ぎよ」
「そうね・・・横井さん・・・でしたね。ごめんなさい」
「構いませんよ。行こうか、智子」
「ええ、そうね。敏子、またゆっくり話しましょう。じゃあ」

二人が出てゆくのを見て敏子はなんだか仕事のやる気が無くなってしまった。社長婦人から今はコンビニのパート店員。気持ちは自由で以前とは比べ物にならないほど気楽だが、孤独感だけは変わっていない。誰でもいいから・・・欲しい、と心の中で叫んでいた。

「行雄さん、敏子に誰かいい人居ないかしら?」
「46歳だろう・・・バツ一か。難しいなあ・・・綺麗な人ほどうまく行かないんだよ。不思議なもので」
「だから私はうまくいったの?」
「どういう意味?」
「だから、うまくあなたといったのは、私が綺麗じゃなかったからでしょ?そう言いたかったんじゃないの?」
「またそんなことで怒ってる・・・しょうがないなあ。機嫌直してよ?ホテルに行こうか?」
「バカ!余計に機嫌が悪くなるわよ」

横井は智子と話していると必ず怒られるという事態になることをまんざら嫌だとは思っていなかった。仲が良いほど喧嘩するって昔から言うからだ。

智子は美咲の事が気にかかっていた。うまくやっているか尋ねた。
「美咲ちゃん、ちゃんと学校に通えているかしら?」
「ああ、大丈夫みたいだよ。早起きしているから」
「そう、良かった。ご飯とかはやれているの?」
「晩ご飯はいつも母を手伝って作ってくれているよ。朝は、俺がパン焼いているけど」
「偉いわ、高校生だから遊びたいでしょうにね・・・」
「そのことなんだけどね。土曜日も日曜日も家に居るんだよ。高志君とどうも逢ってないみたいなんだ。聞くんだけど、別に・・・って言うだけで返事しないんだ。良かったら高志君に変わらないかどうか聞いてくれないか?」
「そうだったの。ごめんなさい、気にならなかった。私たちが結婚できないと気を使ってくれているのかしら。そうだとしたら、間違いだから話さないとね」
「子供の自由を奪ってまで俺たちが結婚にこだわることはないよな。お互いに信頼できれば籍を入れずに同棲すればいいんだから」
「同棲?・・・そうね。それが一番かも知れない。高志と美咲ちゃんが将来結婚しても私たち二人は母親と父親に変わりはないものね。そうよ、そうしましょう!」
「智子・・・半田で住むところ探そう」
「ええ、そうね。日曜日の休みに一緒に不動産屋を回りましょう」

家まで横井に送ってもらって、車内で軽くキスをして別れた。智子は夫が離婚届を提出したので、子供たちに話をしなければならないと準備をした。
「ただいま、有里、高志、帰ってる?」
「当たり前だよ。何時だと思ってるの」高志が減らず口をたたく。
「そんないい方しなくてもいいのに・・・ちょっと話があるから二人とも座って」
「なに?お母さん」有里が先に座ってきた。
「お母さん話さないといけない事があるの」
「何だよ。テレビ観てんだから、早く言ってよ」
「高志、悪いけどテレビ消してきて!」
「そんな神妙な話なの?」
「そう」

二人がテーブルに座って、テレビが消えて、静かになった台所で智子は話し始めた。
「お父さんとお母さんは、今日離婚届を出したの」

一瞬、えっという表情を見せて二人とも智子の顔をじっと見たが、やっぱりという感じなのだろうか、思っていたより驚いた感じではなかった。

「お母さんね、10月の初めにお父さんと話して決めていたの。いろいろ考えたけど、こうするしかなかったの」
「おれは母さんに着いてゆくよ。引っ越すんだろう?ここ」
「高志、そのことなんだけど、お父さんはあなたが大学を出るまでここの家を使っててもいいって言ってくれているのよ」
「その後はどうするつもりなんだ?そのときに考えるのか?」
「もうひとつ話さないといけないことがあるの。あなたたちにはふしだらに感じるでしょうけど、お母さん好きな人がいるの」
「やっぱりな・・・それが離婚の理由だったんだろう?」