ねずみのひと
その後、リサはネコを飼いたいと言わなくなりました。代わりに、ママにお願いをして、ねずみ取りを片付けてもらいました。
それと、前よりもたくさん、詩を唄うようになりました。もし自分がねずみになった時にも、ちゃんと唄えるようにしたいと、そう思ったからです。
そういえば、お魚になった時も、ちゃんと唄えるのかしら。水の中で唄うって、どんな感じかしら。
リサは、ねずみに聞きそびれたことを、残念に思うのでした。
それからしばらく経ったある日、リサは、エリカちゃんの家に遊びに行きました。なんと、エリカちゃんのネコに、子どもが生まれたというのです。
飼うことこそは諦めましたが、ネコはやっぱり大好きなのです。ましてや子ネコだなんて!
リサは喜んで見に行きました。
まだ転ぶようにしか動けない子ネコたちが、母ネコのおっぱいをちゅうちゅうと吸う姿は、とても可愛らしいものでした。
「あら?」
その時ふいに、妙なものが目に留まりました。母ネコの餌箱の近くに、細長い何かが落ちています。
あれは何かしら。
しばらくそれの正体を探っていたリサは、口と目を大きく開き、「あ」と呟きました。
それは、横一文字の傷がある、干からびたねずみのしっぽでした。
おしまい