純愛 物語詩集 第一巻
五月の小夜時雨
それらは無色透明のまま
真っ暗な闇の夜空より
さあ-さあ-と
僅かな音とともに
複雑に 交叉しながら落ちて来る
僕達は
冷たく濡れながら
まるで終わりがないかのように 歩き続けた
そして君は
ぼんやりとした街灯の下で
不意に立ち止まった
「ねえ これで わかって」
君の声が 雨に湿っている
僕は君を見つめながら
「何が?」と
「無臭の雨でね 匂いが 洗い流せたわ」
君は きっと見抜いていたのだろう
僕の苦しみと
そして 僕の躊躇を
「そうかもな」
僕は軽く相槌を打った
すると君は
僕の腕に
しっかりと纏わりついて ----
作品名:純愛 物語詩集 第一巻 作家名:鮎風 遊