純愛 物語詩集 第一巻
「ねえ 開けて」
夜が更けて 突然に
力弱く
君はドアを叩いて 訪ねて来た
僕はドアチェーンを外し そっと開いてみる
君は
緑の黒髪から爪先まで濡れていた
「どうしたんだよ?」
「うーうん ちょっとね」
君は そう言いながら
白い指先を震わせていた
「風邪引くよ まあ入れよ」
僕は 君の冷えた身体が心配だった
そのせいか ヤカン一杯の湯を沸かした
君は ふーふーと
熱いインスタント・ポタージュ・スープを
口にして
そのマグカップを
じっと握りしめていた
そして ソファーに座ったまま
動かない
作品名:純愛 物語詩集 第一巻 作家名:鮎風 遊