路上の塵芥
腐敗してゆく構造の中で、きっと絶望一色ではないと、
そっと灯かりを燈したころには、君はきっともう気づいているころだ。
意味が分からないよ。そうさ、意味なんてないんだ。
分かってしまったら、迷路の奥だ。そこに僕は立っているんだ。
僕の言えることは、分かってしまった奥の迷路で、どうにか絵を描いてみること。
きっと空から大鷲に乗った処女が、あなたの絵を賛美することもあるだろう。
けれど、あなたは賛美されないでいる。
舞台
目立とうとしている。役者であろうとしている。
役割だ。それを演じてしまおうとしている。あなたは知っているから。
見せかけから滲み出るそれが総てであることを。
不細工な女は言った。
男は心なんて見てない。
賢い男は言った。
女として愛されているものはみな不幸だ。
人として愛されていないから。性的に求められるのは、腹が減りすぎた末にパンを求めるのと同等だ。
不細工な女は歩いた。
賢者と謳われた彼女には、女としての美質はなかった。
しかし、本来の愛はたしかに天から光のベールとなって彼女に降り注いでいた。
生活の女たちは、たったひとりの男の精子を受け止めたがゆえに
あらゆる悲喜劇の中にいた。賢明な「人」は、その中には一切いなかったのだ。
赤子風呂
光輝の坂を登りつめた丘の上でふりかえってあなたは
煌く落とした粒子たちの絨毯に胸を詰らすの
そうやってあなたは揺り椅子で涙を浮かべるの
いまや人生の宵を迎え
底は真青になっている 灰路だけが続いてゆく
振り向いてみろ やはり絨毯なんてない
街に出てみろ 光り輝くブランドたち
高貴なたたずまいで あたかもおまえより上でいる
周囲の眼が気になるのだ それはきっとお前の眼だ
活気を失う半分死んだ目だ 生気は路上に置いてきた
フランスかぶれの酒と薔薇の怠惰の日々
現代の端っこの シミの一点のそこの場所で
誰にも届かない 意味もない 翻弄された愚昧だけの青春に
あなたはもう疲れたろうに
自由詩であなたは解き離れる
それはたんなる粗大塵にすてられた処女だ
恰も清純であるかんじょうに
高潔であれ 髪の毛なぞのびるにまかせ
したり顔の神聖面で「聖書」を嘯くな
そうやって首を絞めるのはお前とその周りの人々なのだから
欲望の空虚
洪水の後の廃墟を写真に焼付けてみよ
戦後の焼け野原
青空は心の鏡だ 疲れた労働者の嘆息は雲となり
雨となって還ってゆく
染みた自意識は慰めの中にいる 雨は病者の隠喩
あらゆる計画は崩壊の前提に起立する
すなわち崩壊しているということと背反なのだ
あらゆる存在は既に終わっている
終わったところに祝福をせよ
さすれば創造という芽が あなたを慰めよう
さあ紡ぎだろう 春は目の前にある
貶めようとする現実主義者たちを振り切り
厳しいものだと叱咤するニヒリストを横切り
あなたはいま ようやく祝福された故郷で 真実の一歩を踏み出す