二郎
こんな夏子との会話を終えて、高見沢はいつもの冷えたベッドへ潜り込んだ。そして詮方ない思いでボソボソと呟く。
「夏子は二郎と住み出して幸せそうにしている。これは分身の二郎が俺に代わって、夫の役目を果たしてくれているのかも知れないなあ。うーん、切腹を放免してやったら……、これがその代わりの、ヤツの男の責任の取り方だったということなのか」
高見沢はこんな屁理屈に一人納得し、ゆっくりと目を閉じる。暗闇が身体全体の上にしっかりと覆い被さってくる。
そしてその後、単身赴任の堅いベッドの中で、なぜか一種の安堵感を覚えながら深い眠りへと落ちていくのだった。
おわり