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キツネ目をつかまえろ

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 結城は腹を抱えて笑った。暫く笑ってから彼は云った。
「僕は或る日、パリの近くのオートゥイユ競馬場でスケッチをしていました」
「昔、ヘミングウェイが入り浸っていたという、障害レースの競馬場ですね。凱旋門賞のロンシャン競馬場も、近いらしいですね」
「よくそれをご存じでしたね……そこで、このマンションの持ち主と出会い、格安でここを借りることができました」
「大当たりした話じゃなくて安心しました。私はもう競馬をやめることにしました。一獲千金を夢見ていると勤労意欲を失う。そう、思えてきたからです」
「僕も宝くじや馬券を買うことは、あまり良くないことだと思います……僕の絵は安い値段で売り買いされています。でも、何とか描きながら暮らせることがありがたい。ほかの誰よりも、描くことが好きだという点だけは、自信がありますよ」
 早川は急に身を乗り出した。
「……あのう、結城さんの絵を見せて頂けませんか」
「……ないんです。画商のところの倉庫にはいくつかある筈ですが。飾ってある銀行とホテルを数箇所、教えましょうか」
「はい。お願いします。北海道とか、沖縄だと困りますけど」
「関東だけに限定しましょう」
「ところで、結城さんは、日本では描かないということですか?」
「今後は宝塚をモチーフに描きたいと思っています」