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― つかの間のふれ愛 ―

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 それまで近くに一人暮らしをしていた長男が、仕事の関係で都内へ引っ越すことになり、娘はその後釜に座ることになったのだ。
「早いなぁ……もう少し居ると思っていたのに……」
 引越しの知らせを聞いた私の、それが正直な気持ちだった。

 引越し当日は、娘の友達・彼氏・そして一番下の息子も手伝いに来た。
 この息子は私が家を出た時三歳だった。
 私の身勝手さの一番の犠牲者かも知れない。
 今でも私はそう思っている。だから子供たちの中でも、この子が一番気掛かりだ。
 
 ともあれ、みんなのお陰で娘の引っ越しも無事終了し、娘は出て行った。
 わずか二ヶ月足らずの同居であった。
 娘の居なくなった後の私の部屋は広くなった。 
 歩くスペースしかなかったのに、今は広々している。
 もともとが一DKなのだから、広くなったってたかが知れているのだ。
 だがその広さは、荷物がなくなったからだけではなく、娘の存在がなくなった。
 それ故の広さのように感じた。

 また独りでの淋しい生活が戻ってきた。

 しかしいずれは嫁に行くであろう娘と、その前に、僅かな期間でも一緒に暮らせて本当に良かったとつくづく思う。
 多分もう一緒に暮らすことは永遠にないだろうから……。
 
 そしてこれから先、まだまだ沢山の人と出会い、それによって学び成長し、いずれは結婚して母になるだろう娘に『幸多かれ!』と、心の中で呼び掛けるようにエールを送った。