鬼事(5/12編集)
「なんてことのない夢だよな。けどよ、あの日から、オレはなんとなく気になることがあんだ。夢で、もう一人の自分に会ったなんて話はよくあるだろ?」
それは大体、そのもう一人の自分に追いかけられたり危害を加えられたりする話だ。追いかける側の自分が、もう一人の現実に手に入れるために。
「けど、オレの場合はまったく逆だろ。それが、不思議だなって。――なあ、なんでだと思う?」
「え、今の服か? ああ、この間のカラオケのときも着てったぞ、その時のシャツの色? 馬鹿言え、最初から黄色と黒だったぞ。なんだ? そんな、後ろに幽霊でもいるような顔をして。どうしたってんだよ」
作品名:鬼事(5/12編集) 作家名:狂言巡