カナダの自然に魅せられて ~憧れのカナディアンロッキー~(1
お部屋に戻って、荷物の整理をしてからみんなでビールを開けて飲んだ。
暫くして、姉がお風呂に入っている間に、美月と喋った。
「美月ちゃん、この前のサーモンのグリル美味しかったわ。あんな大きな魚料理もよくするん?」
「節約しないとあかんから、よくするよ」
「サーモンを釣りに行った友だちにもらったって言ってたけど、彼氏なん?」
「そんなんと違うよ」
「ふーん、そうなん」
とは言ったものの、今も怪しいと思っている。
「1年経つのに、どうして神戸に帰ってこうへんのん?」
「もうしばらく居たいから、居れる方法を今考えてるねん」
「おばあちゃんも心配してるから1回帰っておいでよ」
「うん、チケットの安い時期になったら1回帰るわね」
と、この時はそう言ってたのに、1年過ぎた今も帰らず。
10月からは専門学校に通ってるという。向こうでの就職を狙ってるみたいだ。
いよいよ、怪しいのだが…。
「カナダの青年てカッコいい人多いよね。背が高いし、顔ちっちゃいし…。ホテルのボー イさんもいい人やったし、あのタクシーのお兄さんもかっこよかったし、町ですれ違っ た人もかっこよかったね~。いい人できたんじゃないの?」
「別に、そんなん目的で来た訳じゃないから!」
と、一蹴された。
それ以上、この話は進まず…。姉との約束は果たせなかった。
美月は、私とは違って目がクリクリで大きく、赤ちゃんのときにモデルにスカウトされたぐらいだから、私からみても可愛いと思うのに…。
理想が高いのかな?
全然日本に帰らないこと、前の職場の友人にサーモンをもらったこと、この旅に神戸の家の美月の部屋に置いてあるアクセサリーを何個か持ってきてと姉に頼んだこと。
そんなことを理由に挙げながら、姉は、
「なんか怪しいと思うねん。私にはちっとも言わへんから、美也、あんたから聞いてみてくれる?」
「わかった。それとなく探ってみるわ」
……といった結果があの一言であった。
「こっちの人でもいいんじゃないの。」
「私もそう思ってるねん。もうすぐ30やし、どこの人でもいいから、いい人と結婚して 欲しいと思ってる」
と姉。
「外国に住むことになっても仕方ないわね」
姉は美月が大学の卒業を1年延期して、ニュージーランドに留学したいと言い出したときからその覚悟していたらしい。
美月は私たちに自分のことはあまり話さないが、外国語が活かせる職業を探していた。しかし、就職難のご時勢でもあり、なかなか思うように仕事が見つからなかった。
いろいろ迷いながら、自分の人生、やりがいを探そうとしている。そんな美月を、婚期が遅くなるからといって、日本に連れ戻したくないし、それで、帰ってくるような娘でもない。
美月の選んだ人生を応援しようという私たちの結論になった。
そんな話をしながら、ビールを空け、広々としたベッドで手足を伸ばし、ぐっすりと眠った。
作品名:カナダの自然に魅せられて ~憧れのカナディアンロッキー~(1 作家名:ねむり姫